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自動車産業インフォメーション

2022年10月18日

自動車産業「EVシフト」半数が影響あり 帝国データバンク脱炭素化調査

「自動車産業の半数が電気自動車(EV)シフトはマイナスの影響」-。帝国データバンクが脱炭素社会に向けた企業への影響についてのアンケート調査を実施したところ、EVの普及が事業にマイナスの影響を与えると回答した自動車関連企業は5割を占めた。EV普及はプラスの影響があると回答したのは1割強にとどまる。

欧州や中国、米国の新車市場はEVの販売比率が上昇している。2050年にカーボンニュートラルを掲げる日本でもEVの普及が徐々に拡大する見通しで、多くの自動車関連企業が対応を迫られる。

◆EVシフトでマイナス影響半数 非自動車事業での対応も

部品メーカーや自動車販売店などを含めた自動車関連業種357社にEVシフトの影響を聞いたところ、マイナスと回答した企業の割合が46・5%で、プラスの影響と回答した16・5%を大きく上回った。エンジン周辺の部品や燃料系の事業がなくなることや、電動車向けに対応するための設備投資、研究開発投資などが必要となる。

「既存製品の受注が半減し、新規EV部品を獲得するための設備投資額が増加する」(駆動系部品メーカー)とEVシフト対応による業績を懸念する声がある。事業存続のためにも「自動車関連以外の取引先を開拓している」(操縦装置メーカー)など、非自動車事業でのビジネス展開を模索する動きもある。

特に内燃機関関連部品を主力とする企業の将来に向けた危機感は強く、非自動車事業の確立を急ぐ。日本ピストンリングは、合金材料を開発して医療向けに展開していく。エンジンバルブなどを手がけるNITTANは、神奈川県秦野市の名水を活用して野菜を栽培するなど、農業ビジネスを狙う。

◆「EV普及がプラス」最多は電機関連

EV普及をポジティブに見ているのは電気機械製造関連で、約3割が前向きだ。得意分野であるモーターで駆動することや、大容量バッテリー搭載による新規ビジネスが創出されることに期待している。電気計測器メーカーは「EV用モーターやパワー半導体用の検査機を製造している。これらに取り組む作業場所が手狭になり(作業場所の)環境整備をしたい」など、引き合いが増えているという。

電機関連では、ソニーグループがホンダとEVを開発する共同出資会社を設立し、自動車事業に参入する。部品では、ハードディスクや家電用モーターが主力だった日本電産がEV用駆動モーターシステム事業の拡大を狙うなど、EVシフトをビジネスチャンスとして動いている企業もある。EVは参入障壁が低いともされており、異業種やスタートアップ企業が熱い視線を送っている。

◆化石燃料取り扱い企業は業態転換を検討

脱炭素化は、自動車販売や整備事業者など、川下産業にも大きく影響する見通しだ。脱炭素化が事業にマイナスの影響があると回答したのはサービスステーション(SS)などの専門商品小売事業者が約6割と最も比率が高い。自動車・部品の小売業が約4割。

EV普及による影響では、SSなどの専門商社が5割、自動車・部品の小売が約4割だった。SSでは「取扱商品が炭素を排出する。今後、業態転換することが早急に必要」など、強い危機感を抱いている。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞10月15日掲載