2022年10月12日
茨城県境町で自動運転バスとドローン活用 ボードリーなど、社会課題解決へ
ソフトバンクの自動運転サービス子会社のボードリーなどは、自動運転バスにドローンを組み合わせる新たな物流モデルの実証実験を茨城県境町で開始した。境町の住民が町内の商店にオンライン注文した商品を、自動運転バスとドローンを活用して配送する。
これを実現するため、ボードリーは自動運転バスの遠隔監視システムをドローン対応にした。町では日本初となるドローンの「レベル4」(市街地での目視外飛行)配送も視野に入れる。
ボードリー、エアロネクスト(田路圭輔CEO、東京都渋谷区)、セイノーホールディングス、セネック(三浦義幸代表取締役、東京都新宿区)は3日、自動運転バスとドローンを連携するサービスの実現に向けて境町と連携協定を締結した。同日、自動運転バスから降ろされた小包をドローンに積載し、離陸するデモを実施した。
境町は鉄道の駅がなく、住民の3割が65歳以上と、高齢化が進んでおり、移動手段の確保が課題となっている。解決に向けてボードリーが2020年11月から自動運転バスを運行してきた。21年11月までの1年間の総走行距離は約1万5千㌔㍍となり、町民の足として定着しつつある。
今回、新たに人手不足が深刻化している物流問題の課題解決に向けたプロジェクトを推進する。町民がスマートフォンなどを使って町内にあるスーパーや商店に注文した商品を、自動運転バスやドローン、トラックで配送する仕組みを構築する。
ドローンは特に郊外への少量配送での活用を想定しており、自動運転バスで中継地点まで輸送し、そこからエアロネクストの物流専用ドローンを使って宅配する。トラックを含めて配送する場所や量に応じて効率的な輸送手段を選択する。交通弱者の買い物支援と、効率的な配送を同時に実現する。
ボードリーは自動運転バス運行管理システム「ディスパッチャー」に、ドローン向け機能「ディスパッチャーフォードローン」を開発した。これによって自動運転バスとドローンの両方を、境町に設けている遠隔監視センターで一元的に管理できる。
同センターには大型モニターにバスとドローンの運行状況が表示され、トラブルが発生した場合など、常駐するスタッフが遠隔で対応できる体制を整えている。ボードリーでは、ドローンと自動運転バスを活用する「新スマート物流」の実証でサービスを確立しながら、境町以外での展開を視野に入れる。
ドローンは今年12月、改正航空法の施行で、人口集中地域を除く市街地での飛行が可能となる「レベル4」飛行が解禁される。プロジェクトでは23年度中に日本初のレベル4配送サービスの実装を目指している。将来的には注文から30分以内に商品を受け取れるシステムの構築を目指す。
境町の橋本正裕町長は「町内は自動運転バスやドローンで配送する未来が来る。住民が住み続けられて快適になる」と、テクノロジーの活用で過疎化を防ぐことに期待する。「限界集落」で自動運転車とドローンが住民の生活を支えるライフラインとなるのか。高齢化が進み過疎地を抱える自治体も、この取り組みに注目している。
カテゴリー | 社会貢献 |
---|---|
対象者 | 一般,自動車業界 |
日刊自動車新聞10月8日掲載