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2022年9月30日

部品メーカー、国内で生産体制拡充 円安追い風に投資先見直し

為替の円安水準が続く中、国内で自動車部品の生産体制を拡充する部品メーカーが相次いでいる。日産自動車を主力取引先とするヨロズやファルテック、外資系サプライヤーが中部地区で生産能力を増強する。トヨタ自動車などとの自動車メーカーとの取引拡大を狙う。

ホンダを主力納入先とするJ─MAXは岡山に工場の新設を決めた。パイオニアは車載機器の一部の生産をタイから国内に戻しており、円安を追い風に、国内回帰の動きが本格化している。

中部地区で自動車部品の生産体制を強化するのが、日産を主力取引先にする部品メーカーだ。日産の国内生産が一時、大幅に低迷したことから、部品各社は日産以外との取引を拡大するための営業活動を展開してきた。

ホンダやトヨタの売上構成比が伸びているヨロズは、岐阜県輪之内町にサスペンションを製造する工場を新設することを決めた。生産子会社のヨロズ愛知の生産拠点を移転・集約するもので、2024年の稼働を予定している。

新工場はトヨタの元町工場やホンダの鈴鹿製作所、ダイハツ工業の滋賀(竜王)工場、スズキの湖西工場などへのアクセスがいい。25、26年以降に市場投入される自動車メーカー各社の新型車での受注獲得を狙う。

同じく日産が主要納入先のファルテックは愛知県内に工場を新設する予定。現在は福島・館林・九州の3工場体制だが、国内生産拠点網の空白地帯となっている中部地区に展開して、トヨタ向け売上比率アップにつなげる。

外資系サプライヤーも日本市場での生産体制の拡充に投資する。安全部品を手がけるオートリブ(コリン・ノックトン社長、横浜市港北区)は、愛知県知多市にエアバッグを製造する工場を建設する。23年第3四半期に稼働する予定で「中部地区に部品生産だけでなく組み立て拠点も置くことで、戦略的な生産拠点網に変えていく」(ノックトン社長)としている。

トヨタを主要取引先とするサプライヤーも国内生産能力を増強している。タイヤバルブなどを手がける太平洋工業は東大垣工場(岐阜県大垣市)の隣接地に工場を新設する。自動車用ばね部品などを主力にする東郷製作所(愛知県東郷町、相羽繁生社長)は、豊明市に国内では14年ぶりとなる工場を新設した。

ホンダ系のプレス部品メーカーのJ─MAXは岡山県浅口市にボディー部品や電動化製品を製造する工場を新設する。三菱自動車の水島製作所や九州地区にある自動車メーカーの完成車拠点向け部品の受注を開拓、ホンダ以外との取引拡大を図る。

国内の自動車部品メーカーは日本の自動車メーカーの海外生産体制の拡充に歩調を合わせて海外生産体制を拡充してきた。しかし、1㌦=140円を超える円安水準や、新型コロナ禍による世界的なサプライチェーンの混乱などもあって国内に回帰する動きも表面化している。

パイオニアは自動車メーカー向けカーナビゲーションシステムなどの車載機器の生産をタイから国内に順次、移管しており、年内に完了する予定。今後も円安水準が続けば、部品メーカーの海外調達部品の切り替えや、国内生産体制の拡充などが進みそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞9月27日掲載