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2022年9月29日

食い止めろ、インフラ老朽化 大手損保が自治体向け新サービス

大手損害保険会社の間で、インフラの維持管理や災害時の被害抑制につながるサービスを開発する動きが広がっている。道路や橋梁などの中には高度経済成長期に整備されたものも多く、老朽化対策が急務となっている。一方、これらを管理する自治体の財源には限りがあり、点検に必要な人手の確保などに頭を悩ませる自治体も多い。

損保各社はドライブレコーダーの映像を活用して道路の損傷箇所を検知するサービスの提供などに力を入れ、異常の早期発見に貢献している。損害が発生した場合の補償だけでなく、予防にも力を入れることで企業の社会的責任を果たす考えだ。

道路上の損傷を早期に発見するサービスの開発に力を入れるのは、MS&ADインシュアランスグループホールディングスだ。国内の道路の総延長は約128万㌔㍍に上り、点検の負担は自治体に重くのしかかる。道路のひび割れや陥没を放置すれば、タイヤのパンクやバンパーの損傷などにつながる恐れもある。

自治体の道路管理担当者は「過去に発生した交通事故の中には道路の損傷がきっかけだったケースもある」と指摘する。一方で、「早く修繕したいが、予算の制約もあり、なかなか難しい」と窮状を訴える。

同グループの三井住友海上火災保険は昨年12月、人工知能(AI)を活用して道路の損傷箇所を自動検出するサービスを開発し、発売した。同社のドライブレコーダーを付帯した自動車保険から得た映像や走行データを基にしており、今年7月には愛知県田原市が全国の自治体で初めて導入した。

同市は職員2人による道路パトロールを週3回実施し、損傷の早期発見に努めてきたが、把握できる箇所には限界があった。同市では職員のパトロールを継続しつつ、これに同サービスを加えたことで損傷の検知数が大幅に増加。担当者は「ひび割れを中心に、月数千件に上る」としている。

あいおいニッセイ同和損害保険もテレマティクス自動車保険を通じて蓄積した走行データを分析し、走行中の上下振動の程度から道路の損傷箇所を検出して地図上に表示するシステムを開発した。来年度までにはサービス化し、自治体や道路管理会社に提供する予定だ。

災害時の被害抑制につながるサービスの開発に力を入れる動きもある。東京海上ホールディングスは、三菱電機などと協力し、情報通信技術(ICT)を活用して災害に強いインフラづくりを進めている。小宮暁社長は「防災、減災総合ソリューション事業として育て、10年後にはビジネスの柱の一つにしていきたい」と意気込む。

損害保険ジャパンはセンサーで道路や橋などの状態を確認し、地滑りなどが発生する可能性が高いと判断した場合は保険金を支払うサービスの開発を目指す。財源が限られる自治体ではインフラの損傷を把握しても、即座に対策工事を施せないケースも多い。

同社では資金面から自治体の取り組みを支援することで、早期の改修を後押ししたい考え。損傷の度合いが小さい状態で効果的な対策を行えば、インフラの長寿命化にもつながる効果も期待できそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞9月17日掲載