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2022年9月22日

カスタム部品メーカー各社 旧車向け事業でスポーツカーに照準

カスタム部品メーカー各社が力を入れている旧車向けビジネスで、古いスポーツカーに照準を定める動きが目立っている。1990年代に投入した商品を現行のラインアップに残したり、部用品販売だけでなく整備サービスを提供したりするところが出ている。

足元でCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)が進展する一方、自らの手で操る楽しみが大きい古いスポーツカーの人気が高まっている。走行性能を引き上げたいユーザーも少なくなく、こうした需要に対応することで収益拡大につなげていく考えだ。

老舗のエッチ・ケー・エス(HKS)は現行車向けパーツを新規開発する傍ら、90年代に発売したカスタマイズパーツをラインアップの中に一部残している。中でも、内燃機関や足回りのパーツは現在でも一定の需要があるという。同社では現代の技術を応用し、各部品のリニューアルも進め、商品力向上にも取り組む。

同社が生産開始から30年以上経過した車種のパーツをいまだにラインアップする狙いは、「アフターメーカーならではの切り口で、古いものを長く使える環境を手助けする」と、水口大輔社長は説明する。また、エンジンや吸排気系、足回りなど幅広い品ぞろえも奏功し、「一点だけでなく、トータルでのパーツ交換につなげることで、収益性を確保している」という。

経年車は純正の補修部品の供給が終了したものも多い。アフターパーツが修理需要の受け皿にもなっているが、「せっかくだから、HKSのパーツに交換したいというユーザーもいる」(水口社長)と、補修と高性能化を両立できる部品としても人気があるようだ。

同社では日産自動車の「スカイラインGT―R」などに搭載される高性能エンジンに、現在の技術を織り込んで高性能化や燃費改善を図る「アドバンスドヘリテージ」も展開。今後も旧車事業で、新たな可能性を追求していく考えだ。

マイナーな車種を保有しているユーザーは、さらに部品の悩みが増える。昭和トラスト(菊地秀武社長、大阪市西淀川区)のトラスト事業部(千葉県芝山町)は、オリジナルパーツやコンプリートカーのオーダーが可能な「GReddy(グレッディ)ファクトリー」を展開している。

立ち上がりから約2年が経過したが、これまでの知見を、アフターパーツの設定がない製品などをオーダーメイドできるサービスに生かしている。特に、正常に機能する部品の確保が困難なマフラーの注文が多いという。旧車オーナーの悩みが尽きない劣化や錆の問題に対応している。

今年の1月に開かれた「東京オートサロン2022」では、トヨタ自動車が80年代に製造した「セリカXX」を展示した。この車両は内燃機関や外装などに、同社製のオーダーメイド品を数多く盛り込んだ。出展の反響は大きく、同社の窓口に作業の見積もりや相談などが増加したという。

営業部の市原貢部長は、「カスタマイズメーカーが窓口となっている安心感やブランド力が注文につながっている」と分析する。受注状況も安定している。

旧車ユーザーは独自のコミュニティーを築いていることも多く、まずはその中での口コミから受注を増やしていく戦略だ。ユーザーと密にコミュニケーションを取り、こだわりの製品に仕上げることでブランド力向上につなげている。

メンテナンスも稼ぎの柱になりそうだ。コルトスピード(磯部芳彦社長、神奈川県厚木市)は、昨年9月に認証工場を新設。三菱自動車の「ランサーエボリューション」に特化したメンテナンスサービスを本格始動した。初代は92年の発売で、傷んだ車両も増えている。このため、コルトスピードでは「エボテック」と呼ばれる点検メニューを用意。基本価格を定めることで、ユーザーが入庫しやすい環境を整えている。

専門的な知識を持つ同社への車検や点検の入庫台数も増加しているという。渡邊洋幸副社長は「年式的にも古くなり、ディーラーで手に負えない作業も出てきた。愛車に長く乗り続けたいユーザーの需要も多く、困っている人の受け皿になりたい」としている。

かつてレース用エンジンなどを組み上げていたノウハウも活用し、エンジンや変速機のオーバーホールなども可能となっている。「ディーラーからの依頼も歓迎」(渡邊副社長)と、関東一円のディーラーにも提案していく考えだ。

電動化に伴い、カスタマイズの文化が先細るという見方もあるが、愛車を大切にしたいユーザーは根強いとみられる。次世代のクルマファンを囲い込むためのヒントが、旧車ビジネスの中にもある可能性は高い。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞9月15日掲載