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自動車産業インフォメーション

2022年9月20日

自動車メーカー、福祉車両需要取り込みへ 性能向上やオンライン相談

自動車メーカーが福祉車両の普及に取り組んでいる。車いすでの乗降性を高めるなど車両の性能向上を図っているほか、オンライン相談窓口を通じた個別対応などサポート体制も拡充している。高齢化社会を迎える日本で需要拡大が見込まれる福祉車両への対応を一層強化する構えだ。

トヨタ自動車はウェルキャブ(福祉車両)の仕様を多様化することで普及を後押しする。8月に発売した新型「シエンタ」ではショートスロープタイプを設定した。従来型に比べ省スペースで作業ができるため、狭い駐車場でも乗り降りがしやすい。

トヨタがウェルキャブの開発に力を入れる背景には、高齢化社会の進展がある。シエンタのウェルキャブの担当者は「足腰が悪い高齢者世帯への福祉車両の普及率は非常に少なく、マイカーで移動できる人は限られている」と話す。トヨタは負担抑制の上でも福祉タクシーでのシエンタの利用が有効とみている。

マツダは下肢障害者向けの手動運転装置「セルフエンパワーメントドライビングビークル(SeDV)」を「ロードスター」と「MX―30」向けに設定している。「MX―30SeDV」は昨年12月に受注を開始し、10台前後の商談実績がある。

マツダは顧客がオンラインで相談や商談ができる体制を構築している。マツダディーラーと、福祉車両のカスタマイズを手がけるマツダE&T(野間幸治社長、広島市南区)、福祉車両の運転補助装置などを製造するミクニライフ&オート(佐藤好宏社長、埼玉県加須市)が連携し、ユーザーの要望に合わせて関連パーツの提案や減税・助成金の情報提供を行うパーソナライズ対応を図っている。

オンライン商談件数は「少しずつだが、着実に増加している」(マツダ広報担当者)という。

日産自動車は福祉車両の認知度向上を図る。10月に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される国際福祉機器展に3年ぶりに出展し、「キャラバン チェアキャブ」などライフケアビークル(福祉車両)3台を展示する。

日本自動車工業会(自工会、豊田章男会長)によると、福祉車両の販売台数は年間4万台レベルで推移している。福祉車両の販売は横ばいで推移する一方、人口に占める65歳以上の割合は年々増加している。

福祉車両の需要は拡大が見込まれるが、多様化するニーズへの対応も課題となる。幅広いシーンや用途に対応するため、メーカー各社は一層と福祉車両の販売体制を強化する方針だ。

カテゴリー 社会貢献
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞9月17日掲載