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2022年9月06日

仕事やレジャーで使える軽商用車に脚光 ホンダ・ダイハツ・スズキ設定

仕事やレジャーなど多様なシーンで使える軽商用車の設定が増えている。スズキが8月に「スペーシアベース」を発売し、ラインアップはホンダとダイハツ工業を合わせて3車種となった。広い荷室や積載性など商用車の強みと、デザイン性や快適性など乗用車のメリットを併せ持つのが特徴だ。

新型コロナウイルス感染拡大を機に3密を回避できる車中泊やワーケーションなどの需要が高まる中、幅広い用途に対応できる軽商用車が人気を集めている。

多用途の軽商用車の口火を切ったのがホンダだ。2018年7月に「N―VAN(エヌバン)」を発売した。燃料タンクを前席の下に収める「センタータンクレイアウト」を採用し、高さのある荷物も積みやすくした。軽バン初のセンターピラーレス仕様で、助手席側に大きな開口部を設定したのが特徴だ。

22年1~7月の累計販売台数は前年同期比8・5%増の1万9610台と好調に推移している。

これに続き、ダイハツ工業が21年12月に発売した「アトレー」は、広い荷室空間と最大積載量を生かすため、従来は軽乗用車だった「アトレーワゴン」を4ナンバー(商用車)化した。家と職場に次ぐ「第三の居場所」として提案し、発売後1カ月時点の累計受注が月販目標の約8倍の約8千台となる好調な滑り出しとなった。

スズキのスペーシアベースも商用車と乗用車の強みを生かしたパッケージングとともに、後席を自由にアレンジできる室内空間とした。「商用車と乗用車の両方の特徴を兼ね備える車への要望が多かった」(広報担当者)ことから商用車での開発に至ったという。

各社が多用途の軽商用車を投入する背景には、スズキによると軽キャブバンや軽ハイトワゴンで4人乗車の割合が減少し、パーソナルユース化が進んでいることがある。「釣りやキャンプ、車中泊などレジャー用途のニーズが高まっている」(アトレー開発責任者)と、使用用途が変化していることも挙げられる。

加えて、新型コロナウイルス感染拡大を機に3密を回避する意識が高まり、リモートワークが定着した。仕事や生活、遊びの様式がより多様化する中で、「アウトドアなど幅広い用途に対応できる軽商用車には引き合いが強まっている」(ダイハツ・広報担当者)という。

商用では通常、広い荷室と積載量が求められるが、最大積載量(2人乗車時)はエヌバンとアトレーの350㌔㌘に対し、スペーシアベースは200㌔㌘に設定した。スズキはユーザーを対象にした市場調査で7~8割が普段、積載量200㌔㌘以下で使用していることを把握。その分、開発期間の短縮とコスト低減につなげた。

配送など仕事用途がメインのユーザーには「エブリイ」を提案する。乗用ユースも踏まえ、各種運転支援システムを全車標準装備するなど乗用車並みの機能を備えた。

軽に対するニーズが多様化する中で、多用途の軽商用車の選択肢が増えた。今後は競合激化も予想されるが、新たなジャンルとして定着するか動向が注目される。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞9月3日掲載