会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2022年8月23日

自動車メーカー9社の22年4~6月期決算 生産調整や原材料高騰が影響

上場する自動車メーカー9社の2022年4~6月期決算が出そろった。為替の円安効果があったものの、半導体不足と中国・上海市のロックダウン(都市封鎖)に伴う生産調整や原材料価格高騰の影響が大きく、5社が営業減益、1社が営業赤字となった。下期に向けては半導体供給の改善を見込み各社で挽回生産を進める見通しだが、先行き不透明感も強く、通期予想の上方修正はトヨタ自動車とホンダ、三菱自動車の3社にとどまった。

4~6月期は円安が進行した。同期の円ドル相場は1㌦=130円と前年同期に比べ20円の大幅な円安に振れた。為替換算の影響で売上高は8社が増加。トヨタといすゞ自動車が過去最高を更新した。いすゞは子会社化したUDトラックスの上乗せがあった。

一方、半導体不足や部品調達難に伴う生産制約による販売台数の減少や、ロシアのウクライナ侵攻以降、さらに高騰する原材料価格や物流費などマイナス要因も大きく円安効果を打ち消した。為替変動による増益額は9社合計で4090億円に上った一方、物流費や原材料価格高騰による減益額は約5140億円に上った。原価低減や販売費抑制の効果も追いつかず、急速な経済変動が利益を押し下げた。

メーカー別ではスバルと三菱自動車、スズキの3社は増収増益となった。いずれも連結売上台数が増加し、台数・構成差が増益に寄与した。スバルは主力の北米が好調で、スズキもインドで販売が増加した。三菱自は販売増や売価上昇が127億円の増益要因となった。

同期は半導体不足だけでなく、上海のロックダウンに伴う部品供給の遅延での生産調整も余儀なくされた。マツダは4~6月期の生産台数が20万9千台と直前の1~3月期に比べ7割強に落ち込んだ。

生産制約が続く中でも各社の受注は好調に推移した。旺盛な需要に供給が追い付かず、結果的に長納期化に拍車がかかった。

通期業績見通しはトヨタが為替の前提を1㌦=115円から130円に見直し、売上高と当期純利益を上方修正した。一方、営業利益は通期で6700億円の為替差益を見込むものの、資材高騰と仕入先への値下げ要請の見送りなどを合わせ3500億円を減益要因に織り込み、据え置いた。三菱自は円安の影響から売上高と利益を上方修正した。

下期に向けては各社が半導体供給が改善しているとし、挽回生産を計画する。トヨタは5月に公表した通期の生産目標970万台を維持する。マツダは6月から生産が回復し、7~9月期は4~6月期の43・5%増に当たる30万台規模の生産を見込む。通期で出荷台数118万台の達成を目指す。

日産自動車は、上海ロックダウンからの回復も踏まえ「通期のグローバル販売400万台に挑戦し続ける」(アシュワニ・グプタCOO)方針だ。

一方で原材料価格の高騰は今後も続くとみている。三菱自は「希少金属は落ち着いてきたが、鋼材や銅、アルミ、樹脂は上昇している」(池谷光司副社長)として期初公表に比べ原材料価格の影響額を積み増した。新型コロナウイルス感染再拡大や、インフレや金利上昇による景気後退への懸念など先行きには不透明感も漂う。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞8月12日掲載