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2022年8月08日

ロシアへ中古車輸出台数が急増 ルーブル高騰で高価格帯車両に引き合い

日本からロシアへの中古車輸出台数が急増している。日本中古車輸出業協同組合(佐藤博理事長)によると、6月の輸出台数は1万8266台となり、月次ベースで今年最多の輸出台数となった。ロシアのウクライナ侵攻後、欧米や日本は厳しい経済制裁を科している。

しかし、ルーブルは高騰しており、これを背景にSUVやミニバンなど高価格帯の中古車の取り引きが増加している模様だ。輸出台数は既に、侵攻前の水準を上回っている。国内市場でも品不足は続いており、今後、さらなる中古車価格の上昇が懸念される。

日本の輸出業者によると、春先よりロシアのバイヤーから注文が殺到しているという。エレメントトレーディング(西脇渉社長、新潟県胎内市)では通常、ロシア向けに月10~20台を輸出している。しかし、4月ごろから注文が多くなり、7月には200万~400万円の高価格帯を中心に約30台の中古車を輸出したという。西脇社長は「現地から100台欲しいと言われている」としており、ロシアでのニーズの高さを明かす。

通常、月約100台をロシアへ輸出しているジェイピー・トレーディング(ナワブ・アリ・べーラム社長、富山県射水市)も「8月は300台以上の輸出を見込んでいる」との見通しを示す。同社ではウクライナ侵攻直後、輸出台数が大幅に減少した。しかし、足元の回復ペースが速まっており、7月には約200台の実績となったという。

また、中古車輸出大手のビィ・フォアード(山川博功社長、東京都港区)もロシアへの輸出台数が、「侵攻前の月250~300台に戻りつつある」と、上振れを予測している。

ロシア向け輸出の回復は、為替による要因が大きい。ウクライナ侵攻前は1㍔が1・5円前後で推移していたが、侵攻後は一時、0・8円を下回るまでに急落した。しかし、4月下旬から反転し、6月には2・5円まで高騰した。これにより、ロシアのバイヤーは、侵攻前より安く日本の中古車を手に入れることができる環境となっている。

輸出台数の推移も、これを裏付ける。日本中古車輸出業協同組合によると、ロシアへの輸出台数は2月が1万4808台だった。経済制裁の影響で徐々に減少。4月は1万1208台まで落ち込んだものの、6月には1万8266台と大幅に増えており、為替の動きとリンクする。

当初、輸出減の要因となると見られていた現地との決済も、円滑に行われている。日米欧は侵攻直後、経済制裁の一環として国際的な決済システムである「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からロシアの大手銀行などを排除した。しかし、中古車取引では今のところ、規制の対象外となっている現地の地方銀行を経由しているとみられ、輸出の障壁にはなっていない状態だ。

海上輸送にも大きな問題が出ていない。現在は太平洋側からロシアへ運航する日本の船会社がいない。このため、ロシアの船会社が運航する自動車専用船が日本海側の港を結び、400~500台のロットで輸送しているという。

新車の供給遅れから、国内の中古車市場も価格が高騰している。こうした中で、ロシアとの〝タマ〟の取り合いになれば、「さらに値上がりする恐れがある」(中古車専業店)と警戒する声も出ている。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞8月5日掲載