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2022年6月27日

ヤマト運輸、脱炭素化計画 30年までにEV2万台導入

ヤマト運輸は、配達車両への電気自動車(EV)導入をはじめとした脱炭素化計画を公表した。そこでは、まずEVの導入拡大に加えて、その動力を作り出す太陽光発電設備の設置を進めて化石燃料への依存を順次減らしていく。

さらに、既存の輸配送ネットワークを改善し、配達車両の走行距離を削減することでも、二酸化炭素(CO2)の発生を減らす。これらの取り組みによって、2050年までにグループ全体でカーボンニュートラル(CO2排出の実質ゼロ)の実現を目指す。

長尾裕社長が今月、記者会見で表明した。同社は2030年までに2万台のEV導入計画を打ち出した。この数は全配達車両の4割に上る。EVはガソリン車と比較して、燃料費や整備費用を大きく削減できると見込む。そして中長期では維持費の削減によって、内燃機関車とのイニシャルコストの差を相殺できるとも試算している。

導入するEVは、ドライバーの作業性を考慮してウォークスルータイプを中心とする考え。EV導入の陣頭指揮を執る福田靖執行役員・グリーンイノベーション開発部長は「作業性、安全性を考えると、ウォークスルーバンであることが必要不可欠」とする。このほどテスト導入した日野自動車製のウォークスルータイプの低床型EVトラック(積載量3・5㌧)を評価した結果、本格導入することにした。

長尾社長は、「ただEVを導入すればいいというわけでなく、どの拠点に入れるかとリンクさせて進めていく」と説明した。例えばEVには航続距離の課題が残るため、「幹線(距離の長い輸送ルートへの導入)は難しい」(長尾社長)としている。

その一方で、EC(電子商取引)市場の拡大でラストワンマイル配送の需要が増えているといった事情があり、そこにEVの活路を見いだした。配送需要を精査しEV導入のメリットを引き出せる輸送ネットワークの構築を進めていくことで、CO2排出削減効果を最大化する狙いだ。

輸送ネットワークの最適化について、鹿妻明弘専務執行役員・輸配送オペレーション統括は「小型の配送拠点が点在する(現状の輸送)ネットワークを見直す」と方針を示した。現状の輸送ネットワークは10~15年前の設計で古くなったため、最新の需要に合わせて、ネットワークを再編する必要性を示した。

その際に考慮すべき点は、法人顧客向けの宅配が増えていることという。現在、同社の顧客は8~9割が法人で、取引金額が多い大口顧客が多数を占める。より多くの荷物を同じ場所でさばけるように配送センターを集約、大型化して、輸送の効率化につなげていく。

同時に、関東発の長距離発送が増えていることにも対応する。現在、関東の国道沿いを筆頭に、大型ビルが相次いで建設されている点を挙げ、「事業を始めるとなると関東からという企業が多い。そうなると、関東から(発送のための)倉庫を作っていくのが自然な流れ」(鹿妻専務)と説明した。

現在の拠点内の作業スケジュールや輸送ダイヤは、百貨店向けなど域内輸送を想定しているものが多いため、「発送と集荷作業(量)が同じ」ことが前提になっている。今後は、発送業務が増えている現実を踏まえ、拠点内の作業スケジュールなどを見直す必要があるとした。

また、個人消費者の需要においても、変化が起きている。20年からコロナ禍による巣ごもりで、冷凍・冷蔵食品の輸送が増えており、「クール便のボリュームが増えている状態」(鹿妻専務)。20年、21年のクール便宅配量は、コロナ禍前と比較して約2割増とし、この需要の取り込みに本腰を入れる。

具体的には、こちらも輸送ネットワークの改善が必要とした。住宅地近くの拠点では、騒音などの観点から営業時間に制限が設けられており、最適な輸送ダイヤを組みづらい。そのため、配送拠点の統合、集約を視野に入れながら弱点を解消する輸送ネットワークを構築することで、輸送車両の走行距離を削減し、コスト改善、CO2削減につなげていく。

カテゴリー 社会貢献
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞6月20日掲載