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2022年3月25日

国総研、自動運転車向け情報提供システム 高速道路本線へスムーズな合流

国土交通省の国土技術政策総合研究所(国総研)は、高速道路本線に合流する自動運転車への「合流支援情報提供システム(DAY2システム)」と車両を用いた効果検証実験を国総研試験走路で初公開した。道路沿いに設置した車両検知センサーと情報提供装置を活用し、本線走行車の位置や速度、車間距離などの情報を合流車に提供するものだ。

官民で2023年3月末まで共同研究を行った後、研究成果と知見を報告書に取りまとめて公表する。自動車メーカーなどで自動運転車の技術開発に生かしてもらい、30年に高速道路での合流支援情報提供の実現を目指す。

DAY2システムでは、高速道路の本線沿いに設置した車両検知センサーが複数台の本線走行車の速度などを検知。路側処理装置で収集データを変換して合流支援情報を生成し、連結路側に配置された数本のITSスポットに送信したのち、合流車に本線走行車の情報を提供する。

これまでの「DAY1システム」では、車両検知センサーは本線車両の走行を1台ずつ「断面」で検知して、ITSスポットから合流車に提供する情報は「スポット」の本線交通状況にとどまっていた。

一方、DAY2システムは複数台の車両検知センサーが本線走行車の走行を「一定区間」で検知し、ITSスポットは本線の交通状況を「連続通信」で情報提供できるようにした。センサーの検知範囲は2機で約200㍍をカバーしている。

国総研では、次世代の協調ITSの実用化に向けて、自動車メーカーや電機メーカー、高速道路会社など29社・団体と技術開発に関する共同研究を実施している。20年3月には、内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)と連携して、首都高速道路でのDAY1システムの実証実験を行った。その後、同実験で得られた知見などを踏まえて、DAY2システムの技術仕様を取りまとめた。

国総研道路交通研究部・高度道路交通システム(ITS)研究室の関係者は、「変化する本線走行車の速度や車間距離などの情報を合流車に切れ目なく提供できるのがDAY2システムの特徴」と説明する。車両に搭載されたセンサーだけでは検知できない道路上の情報を、道路側で検知して走行車両に提供することで高速道での自動運転を一層進展させたい考えだ。

DAY2システムの効果検証実験は今月1日から開始し、16日に初公開した。試験走路に高速道路の合流部を模擬した区画を整備して、本線側に車両検知センサー、連結路側にITSスポットを配置。本試験では、車内のディスプレーに表示される合流支援情報に基づき、ドライバーの操作で合流を実施している。

合流車の上部には、センチメートル単位の座標を捉えるRTK―GPSを設置。ITSスポットから本線走行車の速度や車間距離などの情報を受信する。車内に後付けしたディスプレーには、本線走行車のアイコンと速度、最も車間距離が広い箇所などが表示される仕組みだ。

効果検証実験では、5台の本線車両が同じ速度で走行。速度は時速50、70、90㌔㍍の3パターンを用意し、合流車はITSスポット付近までに時速60㌔㍍で走行する。また、ITSスポットからの情報提供がある場合とない場合の検証も行っている。

本線走行車と合流車の挙動や速度などをビデオ映像や速度センサーなどで把握し、DAY2システムで合流支援情報を提供することの効果などを検証している。効果検証実験は今月末までの予定。29、30日には合流車に自動運転車を使用する計画だ。これらの結果は6月をめどに取りまとめる。

次世代の協調ITSの実用化に向けた技術開発に関する共同研究は、23年3月末まで行う。報告書は国総研のホームページ上でも公表する。高速道路での自動運転については、25年めどに「レベル4」(特定条件下における完全自動運転)の市場化を目指して、政府全体で取り組んでいる。

将来のモビリティ分野の戦略を描いた「官民ITS構想・ロードマップ」では、自動運転車への高速道の合流支援情報提供を重点施策の一つとして位置付けている。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞3月22日掲載