2022年3月14日
東日本大震災から11年 新たなリスクに直面する自動車産業
東日本大震災の発生から11年を迎えた。甚大な被害をもたらした未曽有の災害は、自動車メーカーのサプライチェーン(供給網)を寸断し、長期間にわたり新車供給に影響を与えた。その後も世界各地で自然災害が頻発していることに加え、感染症の世界規模での拡大や半導体不足が発生、ロシアの侵攻によりウクライナ情勢も悪化している。新たなリスクに直面した自動車産業では、事業継続計画(BCP)を見直す動きも出てきている。
部品メーカーなどで組織する日本自動車部品工業会(部工会、尾堂真一会長)は、今春をめどにBCPを9年ぶりに改定する。部工会は2011年3月11日に発生した東日本大震災、同年9月のタイ洪水を経て、13年にBCPガイドラインを策定した。しかし、その後も各地で自然災害が多発。
20年の新型コロナウイルスのパンデミック(感染爆発)では経済や部品供給網がダメージを受け、従来のBCPだけでは対応しきれなくなった。新しく策定するガイドラインには、各地で頻発する災害への対策だけでなく、感染症対策も盛り込む。中小が多い会員企業の対応力強化につなげていきたい考えだ。
自動車業界は東日本大震災を教訓としてBCPの策定・見直しを進めてきた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大や翌年からの半導体供給不足など、さらなる課題に直面している。半導体不足による新車の長納期化は現在も続いており、完全回復のめどは立っていない状況にある。
サプライヤーは、半導体不足による自動車メーカーの減産への対応に苦慮している。パイオラックスの島津幸彦社長は「事前に決まっていた(自動車メーカーの)生産計画が直前にどんと下がるため、サプライヤー各社が困った状況になっている」と話す。しかし、同社では生産の自動化を進めていることもあり、設備を止めて対応することができるという。通常時からの備えが生きた。
グローバルで危機管理体制の構築を進めてきた日本精工は、そのネットワーク機能をコロナ禍で本格運用した。市井明俊社長は「東日本大震災を含め、さまざまなリスクをくぐり抜けてこられた自信と、予期せぬことが起きた時に対処する能力は十分育ってきた」と対応を振り返る。
コロナ禍では在宅勤務も余儀なくされた。独ロバート・ボッシュの日本法人ボッシュは、コロナ禍前から在宅勤務用の「ホームオフィス」やフレックスタイム制度を設けていた。クラウス・メーダー社長は「活用レベルが大幅に上がった。以前から自宅でも仕事ができる環境を整えていたことが功を奏した」と振り返る。
サイバー攻撃も含め、サプライチェーンに潜むリスクはますます増大していくと予想される。グローバル産業の最たるものである自動車は、世界中のあらゆるリスクと無縁ではない。11年前の経験を踏まえて蓄積してきたリスク対応力をさらに磨いていくことは、日本の自動車産業の国際競争力をさらに高めていくことにつながるはずだ。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 一般,自動車業界 |
日刊自動車新聞3月11日掲載