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2022年3月07日

軽EV、商用車がカギ 自動車メーカー各社、普及に弾みを

自動車メーカー各社が軽自動車の電気自動車(EV)の市場投入に向けて、商用車に活路を見出そうとしている。ダイハツ工業は2021年末に全面改良した「ハイゼットカーゴ」でEV化に対応できる車両設計を採り入れた。ホンダは軽EV参入の第1弾を商用車とする。価格が商品力を左右する軽において、乗用EVではガソリン車よりも割高になる車両価格が普及の妨げになる。

一方、軽商用ではカーボンニュートラル実現に向けて物流や通販大手などの事業者からEVの引き合いが強まっており、自動車メーカー各社は商用車に軽EV普及の活路を見出す。

世界的なEVシフトの波は日本独自の規格である軽自動車も例外ではなく、国内自動車メーカー各社が軽EVの市場導入を打ち出している。ただ、価格が高くなるEVの需要が軽市場でどこまで広がるかは不透明だ。

他社に先んじて軽乗用EVを22年春に市場投入する日産自動車と三菱自動車は、EVの車両コストを左右するバッテリー容量を絞り、補助金などを活用した実質価格を200万円程度とする。ただ、バッテリー容量を小さくした分、航続距離は170㌔㍍と大幅に短くなるだけに、自宅で充電環境があるユーザーにある程度需要が限定される見通しだ。

一方、ルート配送や1日の航続距離が決まっている小口配送などの商用車であれば航続距離の短さはそれほどデメリットにはならない。そのため、事業活動の脱炭素化でEVの導入効果が高い物流事業者でのニーズは高まっており、物流大手の佐川急便は独自に開発した中国製の軽EVを導入する計画だ。

国内メーカーも手をこまねいていては商機を逃すと、軽商用EV開発を急ぐ。ダイハツは、新たな開発手法「DNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」を採用した新型ハイゼットカーゴでEV化を想定してリアシート下にバッテリーが搭載できる空間と強度を確保した。モーター搭載位置まではまだ確定していないが、乗用車に比べてモデルサイクルが長い商用車だけに、EV化を見据えた車両設計の構えをとる。

ホンダは軽EVを商用車からスタートさせる。まずはEVの引き合いが強い物流事業者を対象に限定的に販売し、使われ方や性能評価を行った後に一般販売する方針。カーボンニュートラル実現に向けて40年までにガソリン車から撤退するホンダも商用車に軽EV普及の糸口を見出そうとしている。三菱自も存続の危機にあった軽商用EV「ミニキャブ・ミーブ」を改良し物流事業者のニーズを採り込む。

25年までに軽EVの市場投入を打ち出すダイハツの奥平総一郎社長は「軽EVが価格と折り合いがつくのは商用車の可能性が高い」と話す。全商用車保有1400万台の内、約60%を占める軽が商用EV普及のカギを握る。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞2月24日掲載