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2022年3月02日

自動車関連大型イベント 〝安全〟なリアル開催のために

新型コロナウイルス感染拡大の影響により延期や中止が相次いでいたイベントや展示会だが、ここに来て再開する動きが広まっている。国内最大のカスタマイズカーのイベント「東京オートサロン2022」も21年はオンライン開催だったが、今年は2年ぶりのリアルイベントが実現した。しかし、コロナ禍であることには変わりないため、主催者や出展社は感染症対策に万全を期していた。

来場者にも協力を求めた結果、クラスターも発生せず無事に閉幕した。今後の大型イベントの安全な開催の指標となるよう、オートサロンでの感染対策の取り組みに注目する。

オートサロン実行委員会の発表によると、3日間の累計来場者数は12万6869人だった。新型コロナウイルスの感染予防対策を図るため、1日当たりの来場者数上限を同施設収容定員(最大11万4800人)の半数に当たる5万7400人に抑えると事前に定めており、この範囲内に収まった格好。

展示場内も通路幅の拡大や出展社のブース同士の間隔を広げた。こうした影響から、出展社数は366社と例年よりも少なかったものの、密を極力避けられる会場づくりを実現した。

事務局ではこれ以外にも、さまざまな感染対策を準備していた。福井潤一総合プロデューサーは「前年がリアル開催中止となったため、準備期間は実質2年あった」とし、十分に時間をかけて対策に取り組んだ。加えて、リアル開催が叶わなかったものの、前回開催時に用意していた感染症対策のノウハウも生かし「さまざまな事態を想定し、対策を十分に行うことができた」とし、クラスターを発生させなかったことに胸を張る。

イベントの運営では国や自治体と連携した感染症対策をベースに、独自の指標を取り入れるなど、徹底して安全性を重視した。例えば、出展エリアを4カ所に区切り、入場制限をかけることで、人の滞留を抑制して密を避けた。エリア内では二酸化炭素濃度を計測し、十分な換気ができているかも把握していた。定期的な消毒だけでなく、マスクの装着などを見回る人員も増やし、来場者が自ら行う対策の実施も呼びかけ続けた。

独自の感染症対策を施す出展社も数多くみられた。エンドレスアドバンス(萩原正志社長、長野県佐久市)は、ブースの入り口に除菌効果があるミストを噴射するゲートを設置。入り口と出口も分け、人が1カ所に滞留しにくいブース構成とした。

「従業員や来場者の安全を守ることも出展社ができることだと考え除菌ゲートの設置を企画した」と萩原社長は話す。実はリアル開催が中止となった「21年のオートサロンに設置する予定で準備を進めていた」と打ち明けるが、今回は大いに役立っていた。

エッチ・ケー・エス(HKS)は展示車両や部用品の前に端末を用意し、本社にいる開発者がリモートで説明できる体制を整えた。現場で説明するスタッフを減らすことで、ブース内の密を避ける狙い。しかし、カスタマイズ上級者の来場も多く、商品の特性や機能を詳しく紹介できる人は欠かせない。

このため、リモートで来場者の問い合わせにリアルタイムで応えられるようにすることで、実会場と同等の顧客対応力を実現した。実際に詳細な質問をする来場者も多く、「設置の意味は大きかった」と、水口大輔社長は効果を話す。また、説明に立つ開発者の感染を防ぐことにも役立ち、業務のリスク軽減にもつながったようだ。

会場内では例年盛り上がる物販だが、スタッフの感染症対策の観点から規模を縮小する出展社も少なくなかった。しかし、用品各社にとって、イベント出展時が大きな販売促進のチャンスであることに変わらない。このため、電子商取引(EC)サイトに誘導する動きも見られた。

藤壺技研工業(藤壺勇雄代表取締役、横浜市西区)はブース内に設置した案内パネルに、来場者特典としてマフラーなどのカスタマイズパーツが割引になるクーポンコードを掲示した。販売に当たるスタッフの感染リスクを減らしつつ、商機も逃さない取り組みとなった。

オートサロンに初出展したKCインターナショナル(森田海代表取締役、横浜市南区)も、コーティング剤などの割引セールを実施するECサイトへ誘導するリーフレットを配布。従業員の安全に配慮するためだったが、結果的に過去最高の売り上げを記録するなどの成果につながった。

無事にオートサロンが閉幕したことについて、「来場者が新型コロナウイルスに関して理解があったことも、成功の要因」と、福井プロデューサーは来場者のマナーの良さも評価する。事前に、新型コロナウイルスの接触確認アプリをスマートフォンにインストールすることも来場者に求めたが、理解して協力する人が大半だった模様だ。また、事務局は会場に再入場できないようにし、正確な来場者の把握にも努めていた。

福井プロデューサーは「オートサロン開催に関する知見を関連する事業者などが吸収し、他のイベントでも応用してほしい」とも話す。今回の感染症対策を、役立ててもらうことで展示会ビジネスの早期回復に貢献したい考えだ。また、次回の東京オートサロンは来年1月13日~15日の開催を予定している。感染症対策でもバージョンアップした取り組みがみられる可能性もありそうだ。

カテゴリー 展示会・講演会
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞2月26日掲載