会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2022年2月15日

フィルムメーカー各社 車載ディスプレー向け生産増強、大画面化に対応

フィルムメーカー各社が、車載ディスプレー向けフィルムの量産体制を拡充している。ディスプレーの大型化に対応するためで、高度・高機能化する車両技術の中で、乗員への情報伝達機能を担うユーザーインターフェースデバイス需要を下支えする。

車載ディスプレー市場は、電動化やコネクテッド化などを背景に今後も拡大する見通し。フィルムメーカー各社は次世代自動車への転換期を商機と捉え、技術開発も含めて積極的な設備投資を継続していく考えだ。

機能性素材を手がけるデクセリアルズは、栃木事業所(栃木県下野市)に新設備を導入する。車載ディスプレー向けフィルムの需要増加に対応するのが狙い。生産能力を拡充し、迅速な製品供給体制を整えることで売上拡大につなげていく。

同社は反射防止フィルム「HDシリーズ」も製品化しており、高機能化製品の提案を強化していく考え。欧州戦略にも注力する方針を掲げており、2020年10月には車載ディスプレーをデザインする独セムソテックとの協業を開始。「インテリアのトレンドを創出するドイツ市場を強化する」(新家由久社長)計画だ。

光拡散シートなどの製造、販売を手がける恵和は11億円超の設備投資を行う。「センタークラスターやインパネ用途の依頼が多い」(同社)状況などに対応するためで、23年下旬までに光学シート事業の生産拠点である和歌山テクノセンターⅠ(和歌山県印南町)、Ⅱ(同)、Ⅲ(和歌山県御坊市)に約11億5千万円を投資。生産能力の増強を図る。

電子・電気機器、光学機器用向けフィルムなどを手がけるきもとは、欧州市場での事業拡大を視野に入れ、高品質量産体制の構築を進めている。

欧州自動車メーカーやティア1(1次サプライヤー)からの新規受注を目指しており、21年11月には国際自動車産業特別委員会(IATF)が定めた品質マネジメントの国際規格「IATF16949」を取得。三重工場(三重県いなべ市)では、ドイツ自動車工業会のプロセス監査規格「VDA6・3」の基準による運用を開始している。

大塚ホールディングス(HD)のグループ会社で、スマートフォン(スマホ)向けなどにフィルムを提供している東山フィルム(亀島隆社長、名古屋市中村区)は、車載ディスプレー事業の強化に乗り出している。加工開発棟を保有していることを強みに、サンプル品の作製や試作、評価試験などの即時対応に応えるほか生産体制も強化。旺盛な反射防止フィルム需要に対応していく。

これまでスマホ向けにさまざまな製品を提供してきたフィルム各社だが、足元では電子機器メーカーの電気自動車(EV)市場参入が追い風となっている。

電子機器の受託製造サービス大手の鴻海精密工業(ホンハイ)は22年のEV市場に参入し、中国スマホメーカーのシャオミはEV製造拠点を整備した。米アップルの参入も噂され、日本ではソニーが市場参入を検討すると発表している。

スマホでの実績を車載ディスプレーでも生かせるか。フィルム各社が新たな商機をつかむ競争はすでに始まっている。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞2月4日掲載