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自動車産業インフォメーション

2022年2月09日

自動車関連業でウエアラブル端末活用拡大 現場の遠隔管理や作業指示

スマートグラスなどウエアラブル端末を活用する動きが、自動車関連の製造業や流通業で広がっている。新型コロナウイルスの感染拡大で国内外の製造工場への出入りが制限される中、現場の遠隔管理や作業指示などに用いるケースが増えている状況だ。ベテランが持っているノウハウの技術継承や人材育成などに活用するほか、自動車整備分野でも活用する動きが活発化する。

サービスアプリケーションも充実しており、デジタルトランスフォーメーション(DX)の第一歩としても「需要は日増しに拡大している」(端末メーカー)とみている。

ウエアラブル端末の活用をめぐっては、規制緩和を背景に土木、建設業界で先行している。建設現場やメンテナンス業界などにおける監督、確認作業を効率化する働き方改革の一環として「遠隔臨場」が試行されているためだ。

遠隔臨場は段階確認や材料確認、立ち会いをリモート環境で行うもの。国土交通省は2020年5月7日付で遠隔臨場の試行についての指針を示しており、建設業などへの先行導入が進んでいる。

離れた現場の映像をリアルタイムに確認でき、音声や資料を使って指示できるウエアラブル端末。昨今はソーシャルディスタンスや人との接触機会を減らすことが求められるコロナ禍という環境下で、その活用領域が自動車関連の製造現場、流通業界などにも拡大している状況だ。

自動車メーカーや部品サプライヤーの間で増えているのが、海外の製造拠点に対する支援ツールとして導入する事例だ。コロナ禍の影響で日本人技術者の海外出張ができなくなったためで、現場に赴くことなく日本から遠隔支援できる点が評価されている。

自動車メーカーでは車両組み立て工程におけるロボット作業の監視や、保守・整備の遠隔支援などに活用。部品サプライヤーでは、自動車メーカーの新型車生産に合わせた新たな製造ラインの立ち上げなどに利用している状況だ。

製造分野以外でも活用シーンは広がっている。例えば自動車整備業では、スマートグラスを装着したメカニックの視野を上司や専門家と共有することで、的確なアドバイスが受けられる仕組みを整えている企業もある。また、損害保険業界では、事故車の損害調査を行うアジャスター業務に活用しようとする動きもみられる状況だ。

技術継承や人材育成に生かす取り組みも進む。熟練者の目線で撮影した実際の作業や工程を教育や指導に生かすことで、迅速な若手育成や教育時間の短縮につなげている企業もある。

ウエアラブル端末の特徴を活用したサービスアプリケーションも充実している。スマートグラスには音声や資料を映し出せるため、整備マニュアルをコマ送りで表示したり、作業手順の動画を流すなど、現場を支援するソフトウエアアプリケーションの提供も目立つ。

コロナ禍に伴う移動制限はいまだ続いており、自動車製造、流通現場での感染症対策も強化されている状況だ。少子高齢化による労働人口の減少は加速し、後継者不足も深刻化している。自動車関連業界を取り巻く課題解決の一助になれるか。ウエアラブル端末の活用はDXの一つとして、広がりを見せることになりそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞2月5日掲載