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2022年1月26日

存在感高めるSUV 21年国内乗用車販売、初のシェア30%超え

国内の乗用車市場でSUVの存在感が高まっている。日本自動車販売協会連合会(自販連、加藤和夫会長)が発表した2021年の登録車新車販売台数によると、国内で販売されたSUVは65万1093台となり、この5年で1・7倍に拡大したことが分かった。登録乗用車に占める割合は30・4%と初めて30%を超え、ミニバンの32・5%に迫る勢いだ。

コンパクトクラスのSUVラインアップが拡充するなどし、幅広い層の新車需要を吸引。今年も新型SUVが投入される見通しとなるなど、さらに市場が拡大しそうだ。

自販連の統計によると、SUVの新車販売台数は右肩上がりで伸びている。21年は半導体不足などによる減産の影響で前年比3・2%増とやや勢いは衰えたかにも見えたが、乗用車販売全体に占める割合は前年と比べて2・0㌽増と5年連続で拡大。乗用車市場でのシェアを急速に引き上げている状況だ。

国内のSUV販売にとってターニングポイントとなった年が17年だ。それまでホンダ「ヴェゼル」が3年連続でSUV販売台数トップを続けていた中、16年12月にトヨタ自動車が新型車「C―HR」を発売。それまでトヨタが国内市場に持っていなかったコンパクトSUVを投入すると、ディーラー各社が一気に拡販。

17年4月にはSUVとして初めて車名別販売のトップになると、この年1年間で11万台を超えるセールスを記録。年間SUV販売のトップに躍り出た。

同年はC―HRのほかにも、トヨタ「ハリアー」や日産自動車「エクストレイル」がマイナーチェンジしたほか、マツダの「CX―5」がフルモデルチェンジ。メーカー各社がSUVの商品力を拡充したことで、乗用車全体に占める割合は前年比2・4㌽アップの17・3%にまで高まった。

SUV比率は20年にいっそう高まった。コロナ禍によって一時的に新車販売の現場に暗雲が垂れ込めた中、それまでコンパクトSUV市場をけん引したヴェゼルやC―HRよりもさらにコンパクなトヨタ「ライズ」、ダイハツ工業「ロッキー」がヒット。ライズは、17年のC―HRを上回る年間12万台超を達成するなど、SUVトップの座を手にした。

また、トヨタ「ハリアー」がトヨタディーラーの全店舗全車種販売移行後初の新型車として全面改良。上級SUVながら約6万6千台を販売し、ライズに次ぐ販売規模に拡大した。19年にフルモデルチェンジした「RAV4」も勢いそのままに、約5万5千台のセールスを記録した。この年のSUV比率は前の年を8・0㌽上回る28・4%にまで急伸した。

今年もSUVへの関心の高さは続きそうだ。トヨタは「ヤリスクロス」や「カローラクロス」など既販車から派生したSUVの販売を伸ばしているほか、マツダはFRプラットフォームを採用したラージ商品群の新型SUVモデルの投入を予定している。また、前回の全面改良から8年以上経過した日産のエクストレイルも新型投入が期待されるほか、ホンダは新たなSUVを秋にも発売し、ラインアップを拡充する計画だ。

また、潜在需要が高い電気自動車(EV)市場をSUVで攻め込もうとする動きも活発化してきた。欧州勢は、メルセデス・ベンツ「EQA」「EQC」、アウディ「e―tron(イートロン)」、ボルボ「C40」、プジョー「e―2008」など、多くのSUVタイプのEVを日本市場に投入しており、今秋発売予定のアウディ「Q4イートロン」は600万円を切る戦略的な価格に設定。

欧州よりも出遅れていると言われる日本のEV市場での先行を狙っている。こうした状況で国内メーカーも日産が「アリア」の販売を開始するほか、トヨタは「bZ4X」、スバルは「ソルテラ」を発売する計画だ。

一方、販売比率でSUVと僅差にあるミニバンだが、今年は例年になく市場が活気付きそうだ。トヨタが1月に「ノア」「ヴォクシー」を全面改良したのに続き、ホンダは5月に新型「ステップワゴン」を投入する予定だ。

さらにフルモデルチェンジから6年目となった日産「セレナ」も全面改良が期待されている。登録乗用車販売におけるミニバンとSUVのシェアの差はわずか2・1㌽。果たして今年1年間の販売台数は、どちらに軍配が上がるのだろうか。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞1月22日掲載