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2022年1月20日

40回目の「東京オートサロン」 自動車文化発信の祭典に進化

16日に閉幕したカスタマイズカーの祭典「東京オートサロン」が、1983年に前身の「東京エキサイティングカーショー」の開催から40回目を迎えた。当初は暴走族を彷彿とさせる違法改造車が並ぶ、反社会的なイメージを持たれていた。しかし、回を重ねるごとにクルマに個性を求めるドレスアップカーやモータースポーツなど、多様なクルマファン向けイベントとして発展。来場者数も右肩上がりに伸びた。

モータースポーツ子会社などを出展させていた自動車メーカーも2000年代以降、本体が乗り出し、新型車を世界初公開する場としても活用している。若者のクルマ離れが進み、自動車メーカーがモーターショーへの集客を確保するためのあり方を模索する中、クルマファンの心をつかむ独自のポジションを築いている。

イベントがスタートした1980年代、「改造車と言えば暴走族」のイメージが強かった。そうした中、自動車チューニングを専門に扱う「オプション」や「カーボーイ」といったカスタマイズカー系の雑誌が創刊されたこともあって、自動車の出力アップなどの高性能化を競うチューニングが注目されるようになり、カスタムパーツ市場も拡大。

東京エキサイティングカーショーは、こうしたチューニングカー文化の発展を目的にスタートした。

89年には日産自動車「スカイラインGT―R(R32型)」、93年にはトヨタ自動車「スープラ(A80型)」といった国産スポーティーモデルが人気となり、エンジンのパワーアップを図る改造が一部のファンの間で広がり、アフターパーツ市場も活性化した。

自動車メーカー系のチューナーとして日産の「ニスモ」やホンダの「無限」なども登場、新車ディーラーでも改造車を取り扱うようになる。そして95年にはカスタマイズ規制が緩和。市場が一気に盛り上がった。

しかし、その後、排ガス規制の強化がアフターパーツ市場を直撃、業界は冬の時代に突入する。スープラやマツダのロータリーエンジンを搭載した「RX―7」など、90年代を代表するスポーティーモデルが排ガス規制をクリアできずに2000年代に入って相次いで姿を消した。

その後、小型FRスポーツモデルの「トヨタ86」/「スバルBRZ」が登場した12年以降、アフターパーツ市場は息を吹き返す。東京オートサロンでも両モデルをベースとしたカスタマイズカーが多数展示され、「走り屋」がアフターパーツ市場をけん引。19年にはスープラが復活するなど、スポーツカーの新型車投入も追い風となった。

価値観の多様化で、ボディーに派手なカラーリングを施したり、エアロパーツを装着するなど、オーナー独自仕様の外観に仕上げるドレスアップカーもカスタマイズカーの活性化を支えている。走行性能や乗り心地が悪くなるのを無視して極端に車高を低くする「シャコタン」や、巨大なフロントスカート、リアウイングを装着するスタイルも登場。

ピカピカの装飾パーツを装備した「VIPカー」が人気となり、東京オートサロンでもドレスアップ系の展示が目立つ。アニメやゲームなどのキャラクターのイラストをボディーにデザインする「痛車(いたしゃ)」も一部で流行した。

00年代に入ると、東京オートサロンとは距離を置いていた自動車メーカーがその集客力や情報発信力に目を付けて出展を本格化した。隔年開催の東京モーターショーの裏年には、スポーティーモデルなどの新型車をお披露目する場として活用するケースが目立つようになってきた。

毎年、シーズン開幕前の年初に開催されることから、自動車メーカーがモータースポーツ活動を発表するのも恒例行事となっている。16年には東京モーターショーを主催する日本自動車工業会が東京オートサロンを後援、日本のクルマ文化を活性化するのに協力していくことで一致した。

ただ、東京オートサロンは不正改造車というグレーなイメージが付きまとう。開催期間中、爆音を立てたり、公道でドリフト走行する四輪車もあり、地元警察と国土交通省が会場周辺で不正改造車の取り締まりを実施する。チューニングパーツメーカーは、取り扱いを保安基準適合パーツに絞るなど、グレーなイメージの払拭に躍起になっている。

21年の前回イベントは新型コロナウイルス感染拡大を受けて会場での開催を中止し、オンライン開催に切り替えたが、結果的に地方や海外に日本のカスタマイズカーカルチャーを発信できたことから好評だったという。16日に閉幕した今回は、会場とオンラインのハイブリッド開催となった。

この40年間、カスタマイズカー市場は様変わりした。派手な改造を施したドレスアップカーや走り屋向けだけではなく、アウトドアや車中泊用途など楽しみ方も広がり、消費者ニーズの多様化に合わせて求められるクルマの需要も変化してきた。

世界中でモーターショーの来場者数が低迷しており、自動車メーカー各社は集客に頭を悩ませている。その中にあって、ニッチであってもクルマを自分流に楽しみたい人のニーズに対応してきた東京オートサロンの来場者数は右肩上がりで伸びてきた。クルマは移動する「手段」であるが、クルマそのものを楽しむことを「目的」とする人は着実に増えており、オートサロンの盛り上がりは日本にクルマ文化が定着した証しと言える。

カテゴリー 展示会・講演会
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞1月17日掲載