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2022年1月12日

日刊自連載〈回顧2021〉新車販売 受注好調も長納期化が直撃

2021年の国内新車販売市場は、好調な受注活動とは裏腹に減産による長納期化に悩まされた1年だった。半導体不足に端を発した自動車メーカーの生産調整は、コロナ禍による海外生産部品の調達難も加わり深刻化。メーカー各社は年度末に向けた挽回生産を準備しているものの、物流ひっ迫など新たな問題も発生。新車ディーラー各社では従来にも増して非新車部門収益の重要性が高まっている。

「これだけ長納期化になるとセールスのモチベーションも下がる。当面は受注台数で評価するつもりだ」。こう話すのは首都圏のホンダ系新車ディーラーの社長だ。新車ディーラーセールスの評価は、車両販売の売り上げを計上する新車登録や納車をもってカウントするのが一般的。しかし、長納期化によって長年続けてきた慣習も変えざるを得なくなった。

また、多くのディーラーはこれまで、車検6カ月前を代替提案開始の目安にしていた。しかし、自動車メーカーの生産調整によって、一部の人気車種で受注から納車までの期間が6カ月以上となるケースもあり、車検到来の12カ月以上前から声掛けするケースも増えている。

日刊自動車新聞社が9、10月に実施した全国の新車ディーラー対象のアンケート(297社回答)でも、営業活動の前倒しを進めているとした回答が目立ち、車検到来12カ月前や同13カ月前から代替に向けたアプローチを始動するとの声が少なくなかった。

また、今年は国内市場でも電動化シフトの波が高まった。20年10月に当時の菅義偉首相が50年のカーボンニュートラルを宣言してからおよそ1年。大企業を中心に資金調達や脱炭素への取り組みが欠かせなくなっており、業務用車両の電気自動車(EV)化へのニーズが高まっている。

物流大手の佐川急便は4月、国内のベンチャー企業と共同開発していた小口配送用の軽自動車のプロトタイプを公表。中国で生産した車両を22年から導入し、30年までに使用する軽貨物全7200台をEVに入れ替えると発表している。

こうした数字は、新車販売の動向にも表れ始めている。ラインアップが少ないEVの販売台数は現時点で限定的だが、11月の国内乗用車販売における電動車(ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、EV)比率は44・9%となり、前年同月と比べて9・1㌽上昇した。

こうした中、脱炭素でガソリン販売の縮小が避けらない石油元売りもEVビジネスに着目し始めた。出光興産は2月、タジマモーターコーポレーションと超小型EVを開発・販売すると発表。近く全国6300の系列給油所で取り扱いを開始する。

コスモエネルギーホールディングスもEVと再生可能エネルギーや太陽光パネルなどをセットで販売する営業活動をスタートするなど、EV関連ビジネスを給油所事業の収益源に育てていく考えだ。

EVシフトは、すそ野が広い自動車産業に与える影響が決して小さくない。アフター市場においても整備売上の減少などで収益構造の変化は避けられない。内燃機関車を前提に構築された国内自動車流通市場の歴史にうねりが起き始めた。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞12月28日掲載