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2022年1月05日

日刊自連載〈回顧2021〉整備 法定点検にOBD診断結果記載

2021年は自動車整備技術の高度化が一段と進展した1年だった。点検基準の改正で、10月から12カ月ごとの法定点検に「車載式故障診断装置(OBD)の診断の結果」の記載が加わった。車の電子化が進み、外観だけでは良否を判断できない装置の性能維持が目的になる。

同時に、指定工場の保安基準適合証の交付に必要な条件も追加された。整備技術の高度化に対する整備業界の温度差はまだまだ大きいが、自動運転車の普及に向けた法整備は着々と進んでいる。

特定整備制度の施行で20年4月に創設された電子制御装置整備認証の取得がそれほど進んでいない。国土交通省がまとめた電子制御装置整備の認証件数は、11月末までの累計で2万8140件(うち自動運行装置は190件)だった。同制度の猶予期間が間もなく折り返しの2年を切る中で、約9万事業場ある認証工場の半数にも達していない状況だ。

各整備事業者の猶予期間に対する捉え方はさまざまだが、国交省の検討会では認証の早期取得と並行して対象装置を拡大する議論もスタートしている。24年10月には車検でOBD検査が始まり、電子制御装置の項目も入ってくる。エーミング(機能調整)作業も装置の進化に伴い、やり方も変化する可能性がある。いきなりすべてに対応するのは難しい。そのため、対応予定の事業者はやはり認証の早期取得と実践は必要になる。

また、電子制御装置整備の認証を未取得で20年4月までにエーミング作業などの実績がない指定工場は、10月から運行補助装置と自動運行装置を搭載する車両に保安基準適合証を交付できなくなった。あるフランチャイズチェーンの本部担当者は「点検基準の改正を前に重点的に確認した」と慎重を期した。違反があれば、顧客にも迷惑が掛かる。条件を満たすかの確認は改めて必須と言えそうだ。

昨年から続く新型コロナウイルス感染症の影響で、今年もスキルアップの研修会などの延期・中止が相次いだが、本業では日常生活の維持に必要な「エッセンシャルワーカー」として事業を継続した。日本自動車整備振興会連合会(日整連、竹林武一会長)でも頻発する災害や感染症の対策に乗り出しており、マニュアルを作成して整備事業者のBCP(事業継続計画)対策の構築を支援している。

整備事業者には災害時にレッカー車で水没車両を引き揚げることなど地域の期待も高いという。日整連では災害発生前後の対応や資金繰りの手段を整え、社会に必要不可欠な整備事業者の事業継続を支えていきたいとしている。

車体整備では、修理見積もりのデジタル化が進んだ。コグニビジョン(島田浩二代表取締役、東京都新宿区)は人工知能(AI)を活用したシステムを開発。ボッシュ(クラウス・メーダー社長、東京都渋谷区)と日本自動車車体補修協会(吉野一代表理事)は事故時の車両状態を記録する「イベントデータレコーダー(EDR)」のデータを用いて損傷度合いを推測する手法の構築を始めた。

見積もり作業は熟練者に依存する部分が多い。見積もりの効率化は納車期間の短縮など自動車ユーザーにもメリットが大きく、人手不足が深刻な中で整備工場が業務のコアである修理に多くの時間を割けるように変化している。

デジタル化による人手不足の補完は整備業界全体でも急務だ。23年1月には自動車検査証の電子化が予定されており、22年の1年間は自動車関係保有手続きのワンストップサービス(OSS)に向けた動きが活発化すると予想される。業務のデジタル化で付帯業務の効率化や省力化を図り、クルマ社会の安心と安全の担い手として高度化する自動車整備技術への対応をより進めることが求められそうだ。

2021年も新型コロナとの共存を余儀なくされた。国内の自動車関連企業も感染状況や半導体をはじめとする部品不足による新車の納車遅延など、刻一刻と変化する国内外の環境への対応を迫られた。整備、中古車、用品、輸入車、国産車業界の1年を振り返る。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞12月23日掲載