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2021年12月28日

テーマパーク「メガウェブ」22年の歴史に幕 クルマファン創出に貢献

トヨタ自動車のモビリティテーマパーク「メガウェブ」(東京都江東区)が、12月31日をもって約22年にわたる歴史に幕を閉じる。臨海副都心エリアの再開発でメガウェブを含む複合型施設「パレットタウン」の閉鎖が決まったためだ。1999年3月の開館から今日まで、トヨタ車を中心に数多くの市販車や旧車・名車などを展示するとともに、試乗をはじめクルマを通じたさまざまな体験コンテンツを企画・実施してきた。

累計来場者数は約1億2700万人(2021年3月末)。世代を超えて親しまれ、クルマファンの創出に多大な貢献を果たした。

メガウェブは「見て、乗って、感じる」をテーマに、クルマのさまざまな楽しさを体感できる施設として開館した。オープン当日の全国紙朝刊に掲載した全面広告では、メガウェブを「クルマのすべてを遊んでしまうアミューズメントスポット」と表現していた。

トヨタは、メガウェブの開業当時からも若者がクルマに興味を示さなくなっていることを問題視しており、子どもが楽しめる体験コーナーを設けることも運営をしていく上での大きなテーマの一つだった。子どものころからクルマを身近に触れてもらい、興味・関心を育むことで大人になってからトヨタ車ユーザーになってもらいたい狙いもあった。

「時代に沿ったリニューアルを続けてきたことが、年間来場者数の増加につながった。都心でもレーシングカーを間近で見られる場として外国人観光客からも好評だった」と、トヨタのスポーツ強化・地域貢献部スポーツ関連事業グループ古瀬村英夫主幹は振り返る。中でも13年の大規模リニューアルでは、子ども向けの屋内走行体験ゾーン「ライドスタジオ」を新設したほか、試乗コース「ライドワン」の安全性向上などを図った。

近年では、ライドスタジオで小学生から乗ることができる燃料電池自動車(FCV)の「FC―PIUS」(エフシーピウス)や、未就学児(3~6歳)が乗車できる燃料電池バス「SORA」(ソラ)を導入。クルマを運転する楽しさや交通ルールに加え、燃料電池の仕組みを学ぶことができるプログラムも好評だった。

ただ、19年からは新型コロナウイルス感染症拡大の影響で閉館を余儀なくされた。

東日本大震災の復興支援として毎年実施してきた岩手県、宮城県、福島県の郷土芸能の演舞や特産品などを紹介するイベントも中止を決断したが、8月には福島県浪江町にライドスタジオの乗り物を出張させて現地の子どもらに試乗してもらったほか、水素から発電できる仕組みが学べる「燃料電池教室」などを開催した。メガウェブとしては、これが最後の復興イベントとなった。

31日は式典などを行わず、スタッフが来場客を見送って粛々と閉館を迎える予定だ。古瀬村主幹は「コロナ禍で集客型の大きなイベントを行えないまま閉館することは寂しい」と悔しさをにじませるが、「(約22年間)子どもたちに夢を、クルマファンに喜びを与え続けることができた。来場してくれたお客さまに感謝したい」とメガウェブが果たしてきた役割とその成果に胸を張る。

来場者に最後のおもてなしをと、さまざまなイベントを企画した。「トヨタシティショウケース」「ヒストリーガレージ」「ライドスタジオ」と分散する3つのゾーンを巡るスタンプラリーを10月から開始。子どもから好評だという。25日にはクリスマスコンサートを、26日にはヒストリックカーのパレード走行を実施する。27~31日は、最後の感謝イベントとしてライドワンの試乗車を無料で開放する。「グランエース」や「センチュリー」など、普段は自ら運転することが難しいクルマを運転できる。

メガウェブは当初、08年までの10年契約で施設利用が計画されていたが、来場者から好評だったことや都の要請などを受けて利用延長し、今日までに至った。パレットタウン周辺のライブハウス「Zepp Tokyo」や「パレットタウン大観覧車」などの営業も22年8月までに順次終える。施設の跡地には、トヨタグループの東和不動産が25年の開業を目指す「多目的アリーナ」を建設する予定だ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞12月25日掲載