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2021年12月27日

国交相、自賠責の繰り戻し54億円水準で継続へ 財務相と新たに合意

斉藤鉄夫国土交通相は22日、鈴木俊一財務相との間で自動車安全特別会計から一般会計に貸し出されたままになっている約6千億円の繰戻しに向け、新たな大臣間合意を行った。2022年度の当初予算において、繰戻し額を21年度の当初予算比7億円増の54億円に増額する。23年度以降もこの水準を踏まえて、繰戻しを継続することで合意。新たに両大臣が締結した覚書に初めて盛り込んだ。

覚書には自動車損害賠償責任保険(自賠責)への賦課金の導入検討も明記。両省では安定した財源の確保に取り組みながら、事故被害者の救済事業の強化につなげる考えだ。

新たな大臣間合意では従来の覚書には記載されなかった繰戻額の目安が初めて示された。覚書には毎年度の具体的な検討について、「令和4年度(22年度)予算における繰戻額の水準を踏まえる」とされている。このため、新たな覚書の期限となる29年度までは54億円を軸に、いかに繰戻しを増やせるかが議論のポイントとなりそうだ。

また、従来の覚書では繰戻しを実施するか否かも、毎年協議する内容になっていた。これも新たに「一般会計からの繰戻しに継続して取り組む」との文言を明記。事実上、29年度までは繰戻しが行われることが決定した格好だ。

国交省が安定した繰戻しの実施を望む背景には近い将来、自動車事故対策事業に必要な財源が枯渇しかねないとの危機感がある。01年の自賠法改正時に保険料運用益の一部の約9千億円を原資に運用し、同事業を賄う予定だった。

しかし、近年の金利水準の低下を受け、21年度予算での運用益は13億円に沈む。歳出額の144億円に比べて圧倒的に足りない状態になっていた。現状、積立金を取り崩して対応しているが、このままの状況は長く持たないのが現実だった。このため、一般会計からの繰戻しの増額は急務となっていた。

しかし、一般会計も厳しい財政状況となっている中で、巨額の返済は難しいのも事実。このため、国交省と財務省では事故被害者の救済を念頭に、新たな財源確保への検討も進めていく。その有力な案が自賠責保険料への賦課金制度だ。自賠責加入者が一定額を負担し、事故対事業を支える方法で、現在有識者などによる検討会で議論が進んでいる。

国交省では賦課金ありきではなく、既存事業の検証や効率化なども進めることも含めて検討を進める考え。検討会では今年度内に中間とりまとめを行う計画だが、新制度の導入に至ってはユーザーの理解を得ることも重要なプロセスになるのは間違いなさそうだ。

カテゴリー 交通安全,会議所ニュース
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞12月23日掲載