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2021年12月24日

タイヤメーカー4社、脱炭素へ材料見直し バイオマスやリサイクル活用

国内タイヤメーカー4社がカーボンニュートラルの実現に向けたタイヤ材料の見直しに踏み出した。従来から環境に配慮した材料の検討は進めてきたが、脱炭素化の機運が高まってきたことにより、バイオマス原材料の活用やリサイクル技術の確立のスピードが速まっている。また、電気自動車(EV)シフトが世界で進み、EVに適したタイヤ開発も求められる。

タイヤメーカー各社は性能を高めながら、環境にも配慮した材料の技術開発に取り組み、カーボンニュートラルに合わせたタイヤ事業拡大を狙う。

タイヤ材料は「すべて(の材料)をバイオマス化できるわけではない」(住友ゴム工業の山本悟社長)ため、バイオマス化とリサイクル化の両面で考える必要がある。原材料でのカーボンニュートラルに向けた方針をすでに発表している住友ゴムでは、バイオマス由来とリサイクル原材料を融合した「サステナブルタイヤ」を2050年にも実現する計画だ。

トーヨータイヤは二酸化炭素(CO2)削減に焦点を当て、材料の見直しを始めた。バイオマス原材料やリサイクル材料を使いこなす「技術を鍛える」(清水隆史社長)ことに注力する方針だ。

横浜ゴムも現在、再生可能な原材料の調査に乗り出しており、評価を進めている段階。同社はバイオマスブタジエンの開発を、理化学研究所と日本ゼオンとの共同で行い、バイオマス由来のブタジエンの生成に成功。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などとのプロジェクトでタイヤの試作に取り組んでいる。こうしたプロジェクトを含め、タイヤに実用的な材料を検討していく。

こうしたバイオマス、リサイクル化を進める背景には持続的に材料調達できる利点もある。ブリヂストンでは、乾燥地帯でも育つ「グアユール」由来の天然ゴムの活用に向けて動き出した。砂漠などでも育成できるため、緑地を広げてCO2吸収量を増やす考え。グアユールの育成や研究などを進め、26年には事業化、実用化を目指す。

タイヤ業界でのCO2排出量は「スコープ3での(CO2)削減が最も大きい」(トーヨータイヤの清水社長)といわれる。製品使用時のCO2削減では、ターゲットの一つにEVがあがる。EVでは航続距離を伸ばすための転がり抵抗の低減、高トルクに対応するための耐久性や耐摩耗性、車体総重量への貢献としての軽量化などが求められる。

住友ゴムの山本社長は「EVタイヤ(のコンセプトなど)を一つ持ちながら各自動車メーカーの要求レベルに応じた技術を確立することが必要」と強調。EVタイヤへの技術確立も各社は重視して取り組む考えだ。

材料面では「材料メーカーを巻き込まないとできないことも多い」(トーヨータイヤの清水社長)ため、協業を含めた取り組みが広がる見込みだ。バイオマス化、リサイクル化を進める方向は各社ともに同じだが、自社の強みが発揮できる分野を模索し、カーボンニュートラル時代に勝つためのタイヤづくりを実現していく。

カテゴリー 社会貢献
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞12月21日掲載