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2021年12月20日

国交省、新車両区分「小型低速車」 電動キックボード想定し技術基準づくり

国土交通省で、「電動キックボード」などを想定した新たな車両区分「小型低速車」の制定に向けて技術基準づくりが本格化している。有識者会議で、自動車関連団体からヒアリングを実施。その中で日本自動車工業会は、あらかじめ保安基準を審査する「型式認定」を義務化し、安全基準を満たさない不適合車両を市場から排除する必要があると訴えた。

輸送関連からは小型低速車を利用する側の交通ルール順守やヘルメット着用を義務付けすべきとの意見が出された。国交省ではこうした声を参考にしながら詳細を詰め、来年2月頃までに制度や基準の骨子案を固める考えだ。

業界団体へのヒアリングは国交省の車両安全対策検討会の下に設けた「新たなモビリティ安全対策ワーキンググループ」で実施。自工会では車両区分のすみ分けについて、電動車いすなどは歩行者扱いとする「歩道通行車」として従来通り「道路交通法」を適用し、小型低速車と原動機付自転車は「道路運送車両法」の取り扱いとすべきとした。

仮に高齢者向けの歩道通行車が車両扱いになると、逆に安全性が損なわれるとの懸念があるためだ。小型低速車の最高速度を定めるべきとの論点には保安基準が複雑にならないよう、道路運送車両法を踏まえ時速20㌔㍍での線引きを求めた。

型式認定については日本自動車輸入組合も必要性を認める一方、小型低速車はグローバルな流通が見込まれる製品と指摘。このため、型式認定や輸入手続きが円滑になるよう海外の安全基準と調和した保安基準づくりを要望した。

全日本トラック協会や日本バス協会は、車道での電動キックボードとの混在交通における安全面の対策強化を強く要望している。電動キックボードは大型車から把握しにくく、既存の車両との混在交通が本格化すると、円滑で安全な道路交通に懸念が生じる恐れがあると指摘。対策としてナンバープレートの装着により社会的監視下に置き、交通安全への意識向上を図るほか、小型低速車の事故補償体制についても議論を深めるべきとした。

小型低速車のシステムを切り替えることで歩道通行車としても利用できる「状態変化モビリティ」の実現可能性も探っている。国交省は今回、車両区分を走行中に切り替えできないようにすること、走行モードごとに最高速度が自動制限されること、走行モードを外観上で明らかに判別できる表示を行うなど基準の方向性を示した。灯火類の点滅などによる判別方法などを想定する。

自工会からは海外との基準調和観点から、すでに運用されている欧州規格を参考にすべきとの意見が出された。輸送関連からは大型車のドライバーからも容易に確認できる方法が求められていた。

ワーキンググループには、電動キックボードなどを取り扱う事業者で構成する日本電動モビリティ推進協会とマイクロモビリティ推進協議会も参加。今後、さまざまな形態の小型低速車が市場投入される可能性を踏まえ、速度だけでなく、車両重量にも着目した規制の必要性を指摘。後写鏡など小型低速車の利用環境では安全に寄与しにくい装備の撤廃なども要望した。

カテゴリー 会議・審議会・委員会
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞12月17日掲載