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2021年12月09日

四輪車保有台数、軽が下支え 背景に消費者ニーズと商品力向上

この10年間で軽自動車の保有台数を押し上げた要因は、消費者ニーズと商品力の向上が大きい。付け加えると、11年12月~12年9月に実施された2回目のエコカー補助金制度も後押しした。

同制度終了後も14年まで軽自動車の販売台数は伸び、13年度に過去最高の約226万台を記録した。先進技術の搭載や燃費性能の向上も進んだことで、ダウンサイジングや軽自動車を乗り継ぐユーザーが増えたことも保有台数拡大を下支えしたものと考えられる。

また、トヨタが11年9月から、カローラ店とネッツ店、軽自動車比率が50%を超える地域で取扱要望があった一部のトヨタ店、トヨペット店を含む211社で軽自動車の販売を開始した。そうしたことなどに伴い、21年3月末の四輪車保有台数に占める軽自動車比率は40・1%と、11年3月末の36・2%と比べて3・9㌽増加した。

大型車メーカーでは、日野自動車の保有台数の伸びが約30万台とトップだ。普通、小型の両貨物車と特殊用途車のそれぞれを伸ばした。いすゞ自動車は、大型車メーカーでトップを維持するが、保有台数の伸びは緩やかだった。

10年前と比べて四輪車保有台数が減少したメーカーは5社。事情はそれぞれ異なる。最も保有台数が減少した三菱自動車は、数回にわたる不正問題でブランドイメージを棄損して顧客離れを引き起こした。日産は、国内向け商品のモデルサイクルが長期化し、新型車の投入が手薄だったことが乗用車の保有台数減につながった。一方で、「デイズ」シリーズの投入によって軽自動車は約145万台増やした。

スバルは、12年(当時は富士重工業)に軽自動車の自社生産を終了し、ダイハツからのOEM(相手先ブランドによる生産)供給に切り替えた。登録車の商品開発と販売強化にシフトして保有台数を伸ばしたものの、軽自動車の減少分をカバーしきれなかった。

輸入車が保有台数を堅調に伸ばしてきたことにも注目だ。この10年間で約85万台増加した。21年3月末のブランド別乗用車保有台数は、BMWがトップで、2位にメルセデス・ベンツ、3位にフォルクスワーゲン(VW)と続く。

10年前は首位だったVWは3位に後退し、シェアは2・4㌽減少した。10年にトヨタとのディストリビューター契約を終了したことや、15年に発覚した独VWの排ガス不正問題などが少なからず影響したものと思われる。

シェア上位3ブランドを中心に独ブランドが圧倒的なシェアを握るものの、台数規模が中堅に位置するブランドでは、フィアット、ジープ、ルノーの飛躍も著しい。一方で、10年前は乗用車の保有台数がベスト10入りしていたフォードは、販売不振で「今後収益性確保に向けた合理的な道筋が立たない」との理由から、16年9月に日本法人と直営販社を閉鎖して日本事業から撤退した。このニュースは多くの業界関係者を驚かせた。

技術革新によってクルマを取り巻く環境が大きく変化している中、保有台数に占めるHVなど電動車の増加が続いている。21年3月末におけるHVの保有台数は約1007万台で、1千万台の大台を初めて突破した。

そのうち、乗用車が約1001万台と大半を占めて、10年前と比べると約861万台増加した。商品ラインアップが格段に増えたことや、過去に行われた補助金や減免税措置も保有台数増の追い風だった。燃費性能や環境性能の高さ、経済性などからも「HVを経験すると次の代替もHVになる」(トヨタ系販社の営業スタッフ)という。今後もHVは増加傾向が続く。

一方で、電気自動車(EV)の保有台数は21年3月末で約12万6千台と台数規模は小さい。今後は、脱炭素実現に向けてメーカー各社の商品ラインアップ拡充をはじめ、国や自治体による購入補助制度の拡充で増加勢いに弾みがつきそうだ。EVの普及には充電インフラの整備も重要で、マンションや集合住宅で充電環境を整えることも急がれる。

人口減少や少子高齢化などで、国内の四輪車保有台数は将来的に漸減傾向を迎える。限られたパイの中での純増が難しいとなれば、顧客の防衛がこれまで以上に求められる。そのため、販社においては現金一括・一般クレジット利用者と比べて保有期間と買い替え期間が短い残価設定型クレジット利用者の拡大が、重要施策の一つとなりそうだ。

クルマのコネクテッド機能の活用も顧客防衛のツールとなる。一方で、メーカー各社ともに販社と顧客がつながりある管理台数から漏れて接触機会を失った保有台数が一定数あることから、視点を変えれば新規開拓の余地も十分あると言えそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞12月6日掲載