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自動車産業インフォメーション

2021年12月02日

自動車リース各社 中小企業や個人の取り込み強化、新たな需要掘り起こし

大企業を中心に利用を拡大してきた自動車リース業界が、中小企業や個人の需要取り込みに向けた戦略を強化している。大手自動車リース各社は、地方銀行系リース会社などとの連携を強め、地場の有力事業者の開拓を進めている。

働き方改革やコロナ禍によるリモートワークの拡大で、大企業を中心に社用車の台数を見直す動きが少なくない。こうした中、導入企業のすそ野を広げることで、メンテナンスリースなどにおける管理台数を維持、拡大していく狙いだ。

大手自動車リース各社が強化しているのが、各地の有力企業との結びつきが強い、地銀系リース会社との協業だ。こうした企業は、総合リース業として土地、建物、設備を中心に扱っているケースが多く、「自動車リースに力を入れているリース会社は決して多くない」(大手リース会社社長)のが実情だ。

こうした中、自動車リース専業企業は、自社が持つノウハウを提供することで、地銀系リース会社が強みを持つ地場有力企業を開拓。需要の掘り起こしに乗り出している。

住友三井オートサービス(SMAS、東京都新宿区)の露口章社長は「コロナ禍で働き方が変わった影響もあり、大企業は新車の代替や増車といった投資に慎重だ。一方、地方の中小企業は需要がしっかりある」との見方を示す。

同社はすでに地銀などおよそ20行と協業。自動車リースに必要なシステムや整備ネットワークの提供のほか、社員を派遣するなど協力体制を強化してきた。「自動車リースは税金、メンテナンス、契約満了車の処理など手間が掛かるため、総合リース企業にとってプライオリティが小さい。

しかし、われわれからすると宝の山だ」(露口社長)とし、地元での営業力が強い地銀系リース会社の強みと同社のノウハウを組み合わせて需要を取り込む。

日本カーソリューションズ(NCS、髙島俊史社長、東京都千代田区)も、地方の中小リース会社などとの連携を強化する。髙島社長は「カーリ―スは一般的なリースと比べてもシステム投資の負担が大きい。当社のシステムや整備ネットワークを活用してもらう中堅リース会社を増やしたい」と、中小リース会社との協業を増やすことで、同社のシステムや整備網を通じた管理車両台数を底上げしたい考えだ。

オリックス自動車(上谷内祐二社長、東京都港区)は個人向け自動車リースに強みを持つ。「自動車リースのマーケットを見た時、個人向けはまだまだ伸びしろがある」(上谷内社長)と、今後の成長領域の1つと位置付ける。

インターネットでユーザーが自動車リースを申し込む「カーリース・オンライン」では、新車だけではなく中古車リースも契約できるようにするなど選択肢を豊富にしているのが特徴だ。「法人と違い1台1台を積み上げる個人向けはデジタルがなじむ。5年、10年をかけてオンリーワンのサイトに育てたい」(同)と力を込める。

三菱オートリース(中野智社長、東京都港区)も、6月にインターネット受付専用の個人向け自動車リース「ピタクル」を立ち上げ、個人需要の取り込みを本格化。一般的なカーリースよりも中途解約金免除の範囲を広げるなどし、他社との差別化を図っている。

コロナ禍によって企業や個人の自動車へのニーズは多様化している。特に業務のリモート化などによって、社用車の適正台数を見直す企業の動きは活発だ。こうした中、大口顧客との取引を中心としてきた自動車リース各社は、新たなビジネスモデルの構築に向けた動きを加速している。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞11月24日掲載