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自動車産業インフォメーション

2021年11月18日

IT企業各社 多様化する自動車整備事業者向けサービス

自動車整備事業者向けIT(情報技術)サービスが多様化している。従来の業務支援システムの機能だけにとどまらず、集客や入庫案内などの業務を効率化するなど多機能化している。中小規模の整備工場の中には整備士が事務作業から車両販売、カー用品販売などを兼務するケースもある。こうした施策は顧客のつなぎ止めには重要だが、1人にかかる負担は大きい。ITサービスはそうした負担を和らげる存在になりつつある。

ITサービスは単純だが繰り返しの多い作業を効率化するものが目立つ。チャットボット(自動会話プログラム)で商品販売や契約ができるチャットコマースを手がけるジールス(清水正大代表取締役CEO、東京都目黒区)は、コミュニケーションアプリ「LINE(ライン)」を活用した入庫の案内や予約ができるサービスを提供している。

電話やダイレクトメール(DM)に置き換わるもので、導入店舗のラインアカウントを「友だち」追加したユーザーに定期点検や車検の入庫案内を自動送付し、そのまま入庫予約を受け付ける。メーカー系ディーラーを中心にサービスを広げており、そのほかの自動車アフター事業者への販路拡大にも取り組んでいる。チャットボットはカスタマイズすることも可能で、入庫以外にも試乗や商談などさまざまな予約にも適用できる。

システム開発のファーストグループ(藤堂高明社長、東京都渋谷区)は、人工知能(AI)を活用したマーケティングツールの販売を今年から始めた。車検が到来したタイミングで顧客ごとに「車検」または「代替え」をAIで予測して顧客や顧客へのアプローチ内容に優先順位を付けて利用者に提案する機能などを持つ。

一部の業務支援システムとも連携しており、既存システムの顧客情報をそのまま活用することも可能だ。整備履歴などをAIが分析して査定する機能もあり、整備工場が苦手とする車販を補完する。

ミツモア(石川彩子社長、東京都千代田区)はウェブ上で整備や修理の見積もりが取れる「ミツモア」を運営する。約30カテゴリー・300種類の見積もりが可能で、2017年3月からの累計依頼件数は100万件を突破した。整備関連の依頼件数も今年9月で約7千件と実績は年々拡大している。

3月には登録事業者が手動で行っていた見積もり依頼への応募を予め設定した料金をもとにシステムが自動で行う機能を追加した。従来よりもユーザーの依頼に対して早期のアプローチが可能で、成約数は導入前に比べて約5倍に増加させた。自動車関連は板金やドライブレコーダーの取り付け、カーフィルム施工などの需要が高いという。豊富なカテゴリーを展開していることで、疎遠だったユーザーへのアプローチもできそうだ。

整備工場向けのコンサルティングサービスを手がけるビズピット(小野健一代表取締役、大阪市淀川区)は、年内にも整備工場が月額のサブスクリプション(定額課金)形式で自動車ユーザーに整備メニューを販売できるウェブサービスを立ち上げる。整備工場向けの集客支援サービスとして、定期的な入庫による顧客との関係強化と安定した収益源の確保をサポートする。

また、整備事業者が外注先や整備機器、作業場を共用するパートナーを探せるウェブサービスの構築も計画する。整備や板金の外注先や、電子制御装置整備のエーミング(機能調整)作業の機器、作業場などの経営資源の共有を想定している。

整備工場は業務のデジタル化が遅れているだけに、IT企業にとっては、ブルーオーシャン(未開拓の市場)としての魅力もある。そうした意味で今後さまざまなITサービスが参入する可能性がある。サービスの中には成果報酬型で導入のハードルを下げたものもあり、自社の業務負担と照らし合わせてサービスを活用することも人手不足などの悩みを解消に近づける手段にすることができそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞10月30日掲載