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自動車産業インフォメーション

2021年11月17日

自動車部品メーカーの4~9月期決算 業績改善も先行き不透明

自動車メーカーによる減産や原材料の高騰などが部品メーカーの業績に影響している。2021年4~9月期の業績では、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた前年同期に比べ収益は改善しているが、複合要因によりコロナ禍前の水準には戻っていない。

今後、自動車メーカーは生産の挽回計画を立てているものの、複数の要因が重なっていることもあり、「少なくとも22年3月末までは今(9~11月)の水準が続く前提で計画を組んでいる」(パイオラックスの島津幸彦社長)、「(減産や原料価格高騰などで)落ちた分を取り戻すのは難しく、急激な回復は難しいかと考える」(日本精工の野上宰門副社長)など、動向を慎重に見極める部品メーカーも少なくない。

4~9月期業績では、「4~8月は計画に対して同水準の出荷だったが、9月は自動車の減産で単月の落ち込みが大きかった」(KYB)、「昨年度第4四半期から今年度第1四半期にかけて自動車向けは好調だったが、第2四半期から半導体不足の影響が出始めた」(昭和電線ホールディングスの長谷川隆代社長)ことなどにより、コロナ禍からの完全回復には至らなかった。

4~9月期ではこうした複合要因により、太平洋工業は売上高で約45億円、神戸製鋼所では経常損益段階で約50億円の影響が出たという。

通期でも引き続き影響がありそうだ。トピー工業は複合要因による影響額を通期の売上高で60億~70億円程度と見込む。三ツ星ベルトは通期で売上高約15億円の影響が出ると見通す。半導体不足の影響は「2年ほど長引く可能性があり見通しが難しい」(池田浩社長)状況だ。

西川ゴム工業は、半導体不足や一部の自動車部品の需給ひっ迫などを織り込み、22年3月期業績予想について、5月の公表値を「未定」に修正した。今後の業績動向を踏まえ、21年10~12月期に発表する予定だ。関西ペイントの毛利訓士社長は下期の見通しを「予断を許さない状況」と認識する。

同社は期初に国内生産台数を約923万台と想定していたが、半導体不足の影響により約820万台に下振れするとみる。下期の国内生産台数は、前年下期並みの約462万台を見込む。原料価格の高騰の影響は「当面高騰が継続する」(毛利社長)想定で、価格転嫁や固定費削減などで収益確保を進める方針だ。

自動車の生産台数は「11月からおおかた回復基調にある」(太平洋工業の小川信也社長)など、挽回に向け徐々に動き出している。昭和電線HDの長谷川社長は「(自動車関連企業は)在庫調整に入っている。当社では年明けをめどに無酸素銅の出荷が上がってくる」とみている。

太平洋工業では生産挽回に向けた人員確保に取り組んでおり、「計画通り進んでいる」(同)。ニッパツも「北米などで人員をカットせずに雇用を続けている。国内も含め挽回生産に向け、期間従業員雇用の維持、追加募集もかけていく」(池尻修執行役員)。明電舎でも自動車向け製品の生産ラインの人員についてグループ内で調整を進める方針だ。

トヨタ自動車は12日、これまでの減産影響に対する挽回生産分を織り込み、12月の生産計画はグローバルで80万台レベルにすることを発表した。今後、自動車メーカー各社の挽回生産が予定通りに進めば、「業績を上げていける」(ニッパツの池尻執行役員)と期待を寄せる声も出始めている。

ただ一方で、「半導体不足の課題は22年4月以降も残ると覚悟して計画経営にあたっている」(パイオラックスの島津社長)など、複合要因が完全に解決するには時間がかかるとの見方もある。部品メーカー各社は挽回計画への対応を進めながらも、市場動向を注視していく。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞11月13日掲載