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2021年11月16日

日本メーカー、HV展開の手緩めず 各社が独自システム採用

ダイハツ工業がハイブリッド車(HV)市場に参入した。コンパクトSUV「ロッキー」に新たに設定するハイブリッドシステム「eスマートハイブリッド」は親会社であるトヨタ自動車の「THS(トヨタハイブリッドシステム)」の主要機構を活用しながら、エンジンを発電機として使用してモーターだけで駆動するシリーズ式ハイブリッドシステムだ。

シンプルでコストを抑えるというのがシリーズ式を選んだ理由だ。欧州や中国では電気自動車(EV)シフトが本格化しているが、日本の自動車各社は実用性の高いさまざまなHVを用意して実効性の高い脱炭素化を加速する。

ダイハツでは、トヨタに技術者を派遣、軽自動車や小型車に採用しても価格競争力が維持できる独自のシステムを開発してきた。トヨタのTHSは、走行状況に応じてエンジンと2つのモーターが動力と発電の両方利用できるようにしたシリーズ・パラレル方式だ。

ダイハツが開発したeスマートハイブリッドはエンジンを発電機として使用し、動力はモーターのみで駆動するシリーズ式だ。構造や制御がTHSよりもシンプルで小型化、低コスト化も図れるという。

システムの主要部品である発電・駆動用のモーター、ジェネレーター、PCU(パワーコントロールユニット)、バッテリーセルとモジュールはトヨタと共用化し、コストを低減した。この効果としてロッキーHVの価格は、同クラスのトヨタの「ヤリスクロス」よりも安い。

トヨタが1997年に市場投入した世界初の量産型HVの初代「プリウス」に搭載したTHSは、世代交代しながら進化し続けてきた。最新のシステムを搭載しているヤリスクロスは、電力変換損失を大幅に低減するPCUや、充放電の効率を改善したリチウムイオン電池セルを採用した。WLTCモードの燃費は30・8㌔㍍/㍑(最高値)と、同クラスのライバル車と比べて大幅な低燃費性能を実現した。

また、ホンダは99年に市場投入した初代「インサイト」に搭載したパラレル式の「IMA」からスタートし、1モーターとDCTを組み合わせた「ⅰ―DCD」、2モーター式の「ⅰ―MMD」など、システムの種類を増やしてきた。最新のハイブリッドシステムはモーター、モーターとエンジンのハイブリッド、エンジンの3つの走行モードを状況に応じて切り替える「e:HEV」を主力システムに据えている。

日産は2016年にシリーズ式ハイブリッドシステム「eパワー」を市場投入している。コンパクトSUV「キックス」に搭載しているeパワーはダイハツのHVに比べると最大出力が2割以上、最大トルクが5割以上それぞれ高く、バッテリー容量も約2倍。燃費は競合車と比べて劣るものの、高出力モーター駆動による力強い走りが特徴だ。

ダイハツのロッキーは、トヨタの「ライズ」としてもOEM(相手先ブランドによる生産)供給しており、トヨタ向けHVも設定して販売台数の上乗せを図る。

欧州や中国でEVの販売比率が急上昇しているものの、国内新車市場では電動車販売の9割以上をHVが占めている。日本の自動車各社はさまざまなハイブリッドシステムの展開に積極的で、充電インフラが整っていない新興国などを含め、環境対応車としてHV展開の手を緩めない方針だ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞11月11日掲載