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2021年11月08日

首相、COP26でEV普及へ多様な技術追求表明 石炭火力廃止言及せず

岸田文雄首相は、英国グラスゴーで開催中の気候変動枠組条約第26回締結国会議(COP26)の首脳級会合で、「電気自動車(EV)普及の鍵を握る次世代電池、モーターや水素、合成燃料の開発を進めていく」と、自動車の脱炭素化に関する日本の方針を世界に示した。選択肢を電動化に絞らず、多様な技術の可能性を追求する意欲を改めて述べた。

エネルギーに関しては、再生可能エネルギーを最大限導入し、再エネで作り出す水素やアンモニアなども用いて脱炭素化を進めていくとした。一方、石炭火力に対しては具体的な廃止目標などの言及を避けたことから、一部から非難の声が挙がっており、先進国としての日本の環境保全への姿勢が問われることになった。

2日に演説した岸田首相は、「この10年が勝負の年」とし、日本としても新しい地球温暖化対策計画で示した「温室効果ガスを、13年度比で46%削減、さらに、50%の高みに向け挑戦を続けていくことを約束する」と宣言した。

自動車の領域では、カーボンニュートラルに向け「あらゆる技術の選択肢を追求」するとした。中でもEVの普及がその実現の可否を左右するとした上で、水素や合成燃料の可能性も追求しながら二酸化炭素(CO2)の排出を抑えるエネルギーを選択していくとした。

また、アジア全体で脱炭素化を進めることも重要とし、今後5年間で最大100億㌦(約1兆1300億円)の追加支援を行うことも表明した。すでに支援増額を表明していた米国や欧州連合(EU)に並ぶことで、アジアにおける脱炭素化を主導していく考えだ。

一方、日本の石炭火力の方針には批判が集まった。岸田首相は演説で、再エネ最優先をうたったものの、石炭火力に対しては「既存の火力発電をゼロエミッション化し、活用する」との言及に留まった。脱石炭に積極的な欧州勢と比べて消極的な日本の姿勢に対し、世界の環境団体で構成される「気候行動ネットワーク」は地球温暖化対策に後ろ向きな国を非難する「化石賞」に日本を選定した。前回に続き2回目の受賞となる。

日本は多様なエネルギーを用いることで、電力を安定確保することを重要視しており、その中ではCO2の排出が少ない脱炭素型火力発電を目指している。石炭火力に関しては「徐々にフェードアウトする」とし、具体的な廃止時期に関しては明言していない。COP26で日本が目指す脱炭素社会を世界に示したものの、先進国として国際社会の要望に応えるためには、早々の脱石炭火力という高みを目指す必要がある。

カテゴリー 会議・審議会・委員会
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞11月5日掲載