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2021年10月25日

ヤナセクラシックカーセンター 〝匠の技〟で往年の名車を復活

ヤナセ(田多孝社長、東京都港区)の子会社で、板金・塗装事業や部品販売事業などを手がけるヤナセオートシステムズ(江花辰実社長、東京都港区)が運営するヤナセクラシックカーセンター(横浜市都筑区)。過去にヤナセで販売した旧車や絶版車の整備、レストアを行っている拠点だ。

車種や新旧を問わず輸入車に精通したベテランメカニックによる匠の技で、これまでに多くの往年の名車を蘇らせてきた。長く輸入車販売に関わってきたヤナセだからこその責務とし、顧客のカーライフを守るだけでなく、整備技術の継承と人材育成にも役立てている。

1台を長く乗り続けることこそが、ヤナセの顧客の特徴だが、それに伴って、長期にわたって関係を築いてきた顧客の中には、アフターサービスが困難な車両も増えていた。また、旧車などの整備とレストア作業を一手に担ってきたベテランメカニックの世代交代も課題に浮かび上がっていた。

そこで、一筋縄ではいかない旧車や絶版車の整備とレストアの技術継承を目的に、2018年4月にヤナセクラシックカーセンターを開設した。ヤナセオートシステムズの江花社長は「往年の名車を知るメカニックの数は(定年などで)どんどん減っていく。長年培ってきた整備技術やノウハウを後世に残す最後のチャンスだと考えた」と振り返る。

同拠点の開設に合わせて、車種や年代を問わず整備解説書などの資料を全国から回収。それらをまとめながら、ベテランスタッフが蓄積してきたノウハウなどを組み合わせた。今では、全国から旧車の修理やレストアの依頼があり、作業の順番待ちもあるほどだ。

メイン工場では、ベテランメカニック3人を中心に旧車の整備やレストアを行っている。ほかにも、納車前整備や板金など他部署に属するスタッフ数人が、ベテランメカニックから旧車の整備ノウハウを継承すべく取り組んでいる。また、併設の板金センターでボディーの錆補修や全塗装などレストアの作業も効率的に行える体制を整えている。

修理に必要な補修部品の手配にも力を入れている。旧車となれば純正部品が製造廃止となり、入手が困難となることも多い。そのため、互換性があって耐久性など品質が確かな部品を海外から調達することも少なくない。入手困難な部品は、外部企業に依頼して3Dプリンターで製造する。

また、ベテランメカニックの経験、知識、ノウハウを映像などデジタルデータ化して後進に継承する取り組みも開始した。今後は、全国のヤナセ販売店からメカニックを募り、クラシックカーを得意とするスタッフの創出を目指す。

同拠点はこれまでに、340台以上のメルセデス・ベンツの旧車の修理を手掛けてきた。顧客から下取った中古車は商品化し、保証付き中古車としてショールームやイベントなどで展示・販売も行っている。今年3月には、幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催された旧車の展示会「オートモビルカウンシル」に出展。展示した保証付き中古車は、開催初日から成約が相次いだという。

中古車は、不具合の修理や長年の経験から知る弱点の予防整備を行った上で車検を取得。6カ月または走行5千㌔㍍の「ヤナセクラシックカー保証」を付帯する。大切に乗り続けられてきた顧客のクルマを、レストアだけではなく中古車として新たな顧客に送り出して後世に残していくことも役割の一つとしてとらえる。

足元では、2年以上の歳月をかけてフルレストアに取り組んできた「190SL」が完成間近だ。車検の取得を済ませ、最後の仕上げの段階にまでこぎつけた。お披露目会の開催も計画しており、手塩にかけた1台が、まもなく同拠点から顧客のもとに戻る。

今後の取り組みについて、江花社長は「メルセデス・ベンツ車のほかにフォルクスワーゲン車の修理も手掛けたい」と述べ、新たな顧客層の開拓と整備技術の継承による人材育成の充実化につなげたい考え。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞10月22日掲載