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2021年10月20日

商用車メーカー、広がるオープンイノベーション 物流業界の課題解決へ

商用車メーカーがオープンイノベーションを本格化する。三菱ふそうトラック・バスは、商用車の電動化を加速するため、スタートアップや研究者と連携する「FUSOグリーンラボ」プロジェクトを開始した。日野自動車はドライバー不足など、物流業界が直面する課題解決に向けたアイデアを募集し、他社と連携して課題解決に当たる。

物流危機に加え、電動化、自動運転など、商用車メーカーが取り組みを迫られている課題は山積している。リソースが限られる商用車メーカーは外の知見を積極的に採り入れることによって早期解決を目指す。

三菱ふそうは13日、FUSOグリーンラボのプロジェクトに関心を持つスタートアップや研究者がアイデアを投稿できるポータルサイトを開設した。プロジェクトは「持続可能な社会を実現するモビリティソリューションの創出」するのが目的で、重点テーマとして資源保護やバッテリー技術、持続可能なサプライチェーンなど、合計8項目について外部企業や団体、個人と連携していく。

投稿されたアイデアは三菱ふそうのプロジェクトチームが評価・検討して、実現性の高いアイデアについてはワークショップの開催や、実現をサポートする。プロジェクト立ち上げ初年度はパートナーの選定や、コンペによって事業を検討する。

一方、日野はオープンイノベーションを通じて新規ビジネスを創出するプログラム「ヒノ・アクセラレーター」の一環で、走行するトラックのビッグデータを活用した新規事業のアイデアを広く募集し、8月に実施した最終選考でアイデア2件を選定した。車両データを活用したドライバーの運転負荷低減や、ビッグデータを活用した運送事業者向けコンサルティングの新サービスを事業化するため、準備を進めている。

日野のプログラムを推進する小佐野豪績CDO(最高デジタル責任者)は「物流業界の課題を解決しないとトラックだけ売っていても仕方がない。ただ、デジタルデータを使って課題解決していくためのノウハウが日野グループ社内には足りない」という。このため、外部の力を借りて課題解決を図る。

現時点でオープンイノベーションの取り組みを公表していないいすゞ自動車だが、2022年に本社を移転する横浜市に集積しているスタートアップとは積極的に交流していく方針だ。

インターネット通販市場の拡大などに伴って輸送需要は大幅に増加している。一方で、トラックドライバー不足は深刻化しており、国内のトラック物流は危機的状況にあり、物流事業者が主要な顧客の商用車メーカーも早期の対応を迫られている。商用車各社がオープンイノベーションを推進するのは、社内だけで解決することが限界だからで、商用車メーカーの焦りの裏返しでもある。

商用車メーカーでは電動化や自動化に向けた研究開発の壁も立ちはだかる。三菱ふそうのプロジェクトではバッテリーの技術革新など幅広いテーマでアイデアを募り、共同研究から投資までスタートアップ企業を幅広くサポートする。他社の知見を採り入れることで新領域への対応を加速させる。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞10月15日掲載