会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2021年10月19日

自動車部品メーカー オンライン採用、工夫凝らし人材確保

自動車部品メーカー各社が、オンライン採用活動に工夫を凝らしている。コロナ禍に伴うオンライン化によって学生との対面で接点創出が難しくなっている。また、学生は企業に訪問できず、会社の雰囲気や業務内容など理解を深められないまま選考に挑まざるを得ない状況だ。

そのため、内定後に企業とのミスマッチが生じ、内定辞退につながってしまっているケースもある。企業にとっては計画人数を確保できなければ人手不足が悪化し、企業成長に影響を与えることになる。

自動車部品メーカー各社は、特に確保が難しい技術系向けにオンライン上での魅力発信を強化している。技術系人材は、自動車の先進技術向上に欠かせない存在だ。ただ、少子高齢化などを背景に「理系の応募が毎年少なくなっているように感じる」(日本プラスト)など、少ない母数を自動車部品メーカーを含めた多くの企業で取り合っている状態だ。

コロナ禍でオンライン採用活動が浸透したことも重なり、「強みの社風を感じてもらえずに(学生自身の)動機付けが難しい」(林テレンプ)ため、ターゲット層の学生からの応募や採用につなげることが厳しくなっている。

各社は求める人材との接点創出に試行錯誤する。愛知製鋼は機械・電気・情報の人材の採用を強化。従来の大学別リクルーターと並行して専攻別のリクルーターを設け、ターゲット層との接点創出を図っている。

曙ブレーキ工業は、化学・材料・電気系の採用を狙い、専攻別で先輩社員とのオンライン座談会を開催。2023年度は「研究内容などの学んだ内容が入社に生かせるかイメージを持ってもらう」として、会社説明会の実施方法や内容を見直す予定とする。

林テレンプは、オンラインでのインターンシップで、教材として素材や部品を参加者の自宅に郵送。教材を触れながら同社のものづくりを学ぶ機会と位置付け、学生に仕事のイメージづくりをしてもらう取り組みを始めている。

従来とは異なる、スカウト型やリファラル採用なども徐々に広がりつつある。丸順は今年度からスカウト型採用を導入した。従来から課題となっていたデジタル人材を採用できたという。

マレリもスカウト採用を開始。今年度は「選考後期でリカバリーとして利用していた」とするが、今後は採用活動の初期段階となる応募人数の確保や職種別採用への利用も検討する。

オンライン採用は「企業・学生ともに移動などの手間がなくなった」(今仙電機製作所)、「学生が気軽に参加できるため(説明会などの)参加率が高い」(JVCケンウッド)などのメリットがある。

ただ、「(オンライン化で)学生との接点は増えているが、本選考へのエントリー数が減少している」や「コロナ前は志望度アップにつながっていた工場見学ができなくなり、辞退率が上がった印象」(リケン)などデメリットもあり、国内の基幹産業である自動車業界の人手不足に拍車がかかってしまう可能性がある。

自動車業界の次世代を担う人材を絶やさないためにも、オンライン採用に応じたものづくりの魅力発信など部品メーカー各社の学生へのアプローチに工夫が必要となってくる。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 大学・専門学校,自動車業界

日刊自動車新聞10月16日掲載