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2021年10月12日

電動化に力入れる国内二輪車メーカー 軽快な走りや利便性

国内二輪車メーカーがバイクの電動化に本腰を入れる。カワサキモータースは2035年に先進国向け主要モデルの新車販売のすべてを電動車に切り替えることを宣言。ヤマハ発動機は電気だけで走行するバイクの比率を35年に20%、50年に9割に引き上げる。

先行したハーレーダビッドソンの大型電気バイクは価格が350万円で航続距離が約235㌔㍍。電池搭載スペースに制約のある電動バイクは航続距離の確保や低価格化が大きな課題となる。電動二輪車の開発競争が激化する。

国内二輪車メーカーは約20年前に電動車両を市場投入した。02年に初の量産電動バイクを発売したヤマハ発を皮切りに、ホンダやスズキが電動バイクを投入したものの、航続距離や価格、充電インフラ、さらに不具合などもあって普及しなかった。このため、二輪車メーカー各社は触媒の改良やエンジン制御の見直しなどで排ガス性能や燃費性能向上に重点を置いてきた。

今回、二輪車メーカー各社が電動シフトを本格化するのは、東京都が内燃機関バイクの販売禁止を打ち出すなど、排ガス規制などの環境規制の強化に加え、カーボンニュートラル社会の実現に向けて二輪車でも脱炭素が強く求められることに対応するためだ。

ヤマハ発は50年に電気バイクの比率を9割に引き上げる方針を決定、電動バイク用プラットフォームを開発し、30年ごろに市場投入を本格化する計画だ。

当面、電動バイクの中心になるのはグローバルでの市場規模が大きい125ccクラス以下のスクーターだ。中国市場では、すでに普及しており、当局の規制もあって地場系二輪車メーカーが販売するスクーターの新車のほとんどが電動バイクとなっている。

スクーターは1日の走行距離が短いため、電動化してもニーズが見込める。中国市場以外を攻略するため、国内二輪車メーカー4社は原付2種以下に適用する交換式バッテリーの標準化を進めている。

二輪車業界で関心が高まっているのが250cc以上のスクーター以外の電動バイクで、中でもモーターだけで走行する電気バイクの実用化が注目される。ハーレーが電気大型バイク「ライブワイヤー」を日本含むグローバルで展開しているものの、中型クラス以上の電気バイクの市場投入はこれからだ。

カワサキモータースは25年までに電動バイク10機種以上を投入し、35年までに先進国市場に投入する大半のモデルを電動化する。内燃機関を搭載せずにモーターだけで走行する電気バイクの開発に加え、航続距離を確保するため、シリーズパラレル式ハイブリッドシステムを搭載したハイブリッドバイクも開発する。

具体的な二輪車の電動化計画を打ち出していないホンダは、ビジネスバイクやスクーター型の電動化で先行しているが、今後は趣味性の高い分野の電気バイクを市場投入する。

二輪車はリチウムイオン電池の搭載スペースが限られるのに加え、転倒時に発火を防止するための対策も必要になる。電池は重量があるため、車体のバランスにも大きく影響するなど、二輪車の電動化は「四輪車以上にハードルが高い」(ホンダ)のが現状だ。

嗜好性の高いバイクの電動車両が市場に受け入れられるかも大きな課題だ。ヤマハ発の日髙祥博社長は「これまでの研究で電動バイクが楽しい乗り物になることは分かっている」と述べ、モーターのきめ細かい制御を生かすことで、ライダーと車両の一体感を高められる可能性を指摘する。

カワサキは開発中の電気バイクで、内燃機関と同様に操作できる4速マニュアルミッションを開発する。さらにハイブリッドバイクには手元のスイッチで変速する機構を採り入れ、電動バイクでも二輪車らしい走る楽しさを追求する。

四輪車に続けて電動化の波にさらされることになった二輪車業界。市場で多彩な用途に活用されているだけに、実用化に向けてもさまざまな課題を抱えるが「カーボンニュートラルに向けて(電動化を)やるしかない」(伊藤浩カワサキモータース社長)のも事実。二輪車各社はバイクの利便性や走る楽しさを維持しながら、環境負荷を低減するという、かつてない重い使命を背負っている。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞10月9日掲載