2021年10月07日
進む路線バス共同経営 国交省、前橋で全国3例目認可
地方で路線バスの共同経営が進んでいる。国土交通省が9月に全国3例目となる共同経営計画を路線バス事業者6社に対し群馬県前橋市内で認可した。さらに長崎市内で来年4月の開始を目指し準備が進められている。路線バス事業の共同経営は、地方事業者の経営改善と公共交通サービス維持の切り札として期待されている。
その一方で、事業者間の思惑の違いで共同経営化に至らないケースもあり、事例がどれくらい増えていくのか見通しにくい。先行して踏み切った各地の成否が今後の展開を占うことになりそうだ。
前橋市内での共同経営は、関東初の事例となる。6社が連名で8月31日に申請、9月24日に同省が認可した。今月から段階的に運行が始まる。各社の協議で運行回数や運行時刻を設定し、停留所や路線名を統一して効率化を図ることで、路線維持と利便性向上につなげる。
地方の路線バス事業は「競争」が基本だった。しかし、事業者は運転手不足や増え続ける経費、減少が続く乗客の奪い合いなどで疲弊し、このところは安定的な運行の提供すら危うくなっていた。
この状況を打開するため、国は2020年11月、国土交通大臣の認可を経た上で競合するバス事業者が共同経営を行い、協議の上で路線廃止や減便などを認める「独占禁止法特例法」を施行した。この結果、これまで地方都市の中心駅周辺の繁忙路線に複数の事業者の車両が〝数珠つなぎ〟で運行する一方、過疎部の路線をほぼ空車状態で運行し続けるといった非効率な状況を、事業者間の話し合いで解決できる道が開けた。
そして今年4月から熊本市内、岡山市内で共同経営が開始。これらに前橋市内が続いた。
その一方で、共同経営には参画する事業者間の負担割合など合意形成の難しさを指摘する声が挙がる。また、運転手不足や乗客減少を抜本的に解決する手段ではないため、構造的な問題は残されたままになっている。
岡山市のケースでは〝ドル箱路線〟への参入をめぐり、事業者間の対立が起こり、国を巻き込んだ裁判に発展したことが影響したこともあり、共同経営に参画した事業者は両備グループ2社にとどまった。
共同経営は今年始まったばかり。計画通り事業者の経営改善とサービス継続につながるか、先行事例の成り行きを地方の事業者や自治体が注目している。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞10月4日掲載