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2021年9月29日

自動車流通・アフター業界 独自制作動画に活路、新たな顧客接点

長引くコロナ禍で対面営業の機会が減る中、自動車流通・アフターサービス業界で独自制作した動画を法人営業に活用する取り組みが広がっている。社員による手づくりのものから実演販売士を起用した本格的なものまでさまざまあるが、狙うのは顧客との新たな接点づくり。

リモートワークの増加でリアル、オンラインに関わらず面談へのハードルが高まる中、自社商品やサービスの特徴を詰め込んだわずか数分の動画を新たなビジネスチャンスの入り口にしようとする動きが本格化している。

「動画を作成することで顧客への提案機会が増えている。他の部署にも横展開していきたい」―。こう話すのは自動車リース大手、日本カーソリューションズ(髙島俊史社長、東京都千代田区)の井上貴雄営業第一部長だ。コロナ禍でリモートワークを中心にする企業も増える中、主に大企業を担当する同部にとって顧客企業との接触機会が減っているのが課題の一つだった。

新たな提案機会を創出する手段として目を付けたのが独自制作のショートムービーだ。部内の若手社員が、1つのテーマについて3~5分程度にまとめた動画を作成し、取引先に送信。動画視聴をきっかけに商談にこぎつけるケースが増えた。さらにコロナ禍で営業経験を積む機会が減る中、若手社員の提案力強化にもつながっているという。

工具のセレクトショップを展開するファクトリーギア(髙野倉匡人社長、東京都品川区)も自動車整備事業者向けにエーミング(機能調整)作業の準備時間を短縮する工具や手法を提案する動画を動画サイトのユーチューブに投稿する。

新車ディーラーなどを対象に整備工場の作業効率化に向けたコンサルティング業務も手がけており、「動画が話題になり、エーミング作業の改善提案の引き合いが増加した」(法人営業担当者)と、髙野倉社長が出演する動画で新たな商機獲得につなげている。

保険業界も代理店となる新車ディーラー向けに動画活用を本格化している。東京海上日動火災保険は、今年1~8月の間に保険商品の特徴を解説した動画を9種類作成した。出演者に実演販売士を起用し、ディーラースタッフが実際の営業トークの参考にできる内容に仕上げたのが特徴だ。

実演販売士シリーズの累計再生回数は、およそ8カ月間で2万5千回を超えるなど、新たな営業スキルを身に付けようとするディーラースタッフに人気だ。

また、消費者向けの営業活動として動画サイトの活用で成果を上げるケースも目立ち始めた。高級輸入車販売のロペライオ(宮里泰光社長、東京都世田谷区)は8年前からユーチューブチャンネルの運営を開始。スタッフが高級車やスーパーカーを試乗しながら解説するなどの内容がヒットし、チャンネル登録者数は19万人を超えた。

視聴者は40~50歳代が多く、動画視聴をきっかけに、販売につながるケースも増えているという。宮里社長は「販売台数拡大だけでなく、新人採用にもつながっている」と幅広い効果を実感している様子だ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞9月25日掲載