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2021年9月21日

部品サプライヤー各社 サステナビリティーの取り組み本格化

企業成長に向け、サステナビリティー(持続可能性)に対する取り組みが部品サプライヤー各社で本格化し始めている。気候変動問題を含めた長期的な計画を策定、実行することで、企業としての責務を担うとともに企業価値の向上を目指す。

2022年4月には東京証券取引所で3つの市場区分が新設される。中でも上場基準が最も厳しいとされる「プライム市場」では、サステナビリティー関連の取り組みなどが重視される。こうした時代や環境の変化により、「(企業に対する)世の中の目が変わってきている」(トピー工業の高松信彦社長)と認識する部品サプライヤーも少なくない。

製造業では、以前から二酸化炭素(CO2)の排出減に向けた活動や材料のバイオマス化、リサイクルなどに着手する企業はある。長年の取り組みが、現在注目を集めるサステナビリティーにつながっている。

住友ゴム工業は、バイオマスとリサイクル原材料を用いた「100%サステナブルタイヤ」の市場投入を目指す方針を8月に発表した。製造するタイヤで、バイオマスとリサイクル原料の比率で30年には40%、50年には100%を実現することを目指す。

同社は、合成ゴムやカーボンブラックを天然素材などに置き替えた100%石油外天然資源タイヤ「エナセーブ100」を13年に開発。19年にはセルロースナノファイバーを用いた「エナセーブ・ネクストⅢ」を開発するなど、以前からバイオマス材料を用いた製品開発に着手してきた。

100%サステナブルタイヤについて、材料面などでの具体的な取り組みについては明らかにしていない。ただ、バイオマス材料はコストが高く、また量も限られているため量産品への採用ハードルは高いとされている。住友ゴムは「原料メーカーと共同で取り組む」ことで製品化を実現する考えだ。

サステナビリティーの取り組みについて「真っ向から取り組んでおり歴史的に培ってきた」(高松社長)のは、廃自動車や雑品くずなどをリサイクルして製品、供給にまでつなげる循環「ワンピースサイクル」を確立したトピー工業だ。

子会社の明海リサイクルセンター(ARC、愛知県豊橋市)で、廃自動車や雑品くずなどをシュレッダープラントで破砕し、鉄スクラップは鋼材に、非鉄スクラップは非鉄製品に活用する。ゴムやプラスチックのシュレッダーダストは電気炉でコークスとして使用することで、廃棄物ゼロを実現した。

ARCは新設備の導入を進めており、今年10月をめどに立ち上がる予定。従来手法では、シュレッダーダストに非鉄金属が含まれるため、鋼の特性に影響を与えるなどの課題があるという。新装置では、廃自動車から破砕したシュレッダーダストを再度破砕・選別する。

現在の手法では月間約1千㌧のシュレッダーダストのうち約8%が非鉄金属だが、新設備では1%以下に抑えられる。これにより、溶鋼中の不純物を抑制できるほか、CO2削減にも寄与するという。また、非鉄金属の回収量も増えるため、外部への供給量が増加し、収益拡大も見込める。

同社では製造した鉄鋼のうち、約4割を自社部品用やひも付き品などに使用している。この4割も「ワンピースサイクル(で製造した鋼材など)を使える」(高松社長)。今後はワンピースサイクルをどのように拡大するかが課題で、海外での展開や素材の幅を広げていくことなど検討を進めていく方針だ。

豊田合成は、森町工場(静岡県森町)でウェザーストリップなどの製造過程で発生する端材を原材料に戻して製品に使う設備を導入。同社は1990年代に端材再利用に取り組み始め、今年設備を本格稼働させた。カーボンニュートラルの機運を受け、ゴムの再循環にチャレンジしている。

部品サプライヤー各社の将来を見据えて長年積み上げた苦労や実績が、今につながっている。環境や社会全体のことを考えた企業戦略は、時代の変化とともに注目を集めている。持続的な社会の成長の糸口となる取り組みが企業に求められている。

カテゴリー 社会貢献
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞9月18日掲載