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2021年9月17日

自動車メーカー、自動運転モビリティサービス 実用化視野に動き活発

自動運転車を活用するモビリティサービスの実用化に向けた自動車メーカーの動きが活発だ。日産自動車は9月下旬に自動運転技術を用いた新しい実証実験を開始。ホンダは同月中に自動運転「レベル4」(限定領域の自動運転)の公道走行に使用する高精度地図の製作に入る。

過疎地における公共交通の縮小など移動課題を解決する自動運転技術の高度化を図る。一方、商用化に向けてはビジネスモデルの形成が大きな壁になる。技術開発と同時にサービスの付加価値の向上やコスト低減に向けた試みも進む。

日産は21日から自動運転技術を搭載した「e―NV200」を使用し、横浜市のみなとみらい地区で交通サービス「イージーライド」の実証実験を実施する。イージーライドは18年に開始。第3期目となる今回は配車アプリを提供するNTTドコモとの協業で、ユーザーが許容するサービス料金や待ち時間などを検証する。

自動運転の技術は運転支援技術である「レベル2」に相当するものの、高度な組み込みECU(電子制御ユニット)を採用し、従来は必要だったオペレーターと伴走車に頼ることなくサービスを提供する。移動の自由度も高めており、乗降ポイントは15カ所から23カ所に増やした。4台を走らせ、6週間で延べ200人に利用してもらう。

日産が実証実験を通じて将来的に目指すのは完全自動運転によるサービスの提供だ。公共交通や給油所の縮小が進む過疎地では自動運転の実用化が期待されているものの、「ドライバーが乗っている限り、収益性は上がらない」(土井三浩常務執行役員)ためだ。そもそもドライバーの確保が難しいケースもある。レベル4以上の自動運転を実現し、移動課題の解決を図る。

一方で「単に自動運転になったからといってユーザーから得られる対価が増えるわけではない」(同)。一定のコスト増加が見込まれるレベル4の自動運転車を実用化するためには付加価値の向上やコストを低減する必要がある。日産は中古電気自動車(EV)や中古バッテリーの活用、貨客混載やVGI(EVと電力網の統合)での収益確保などを検討。

20年代半ばにレベル4のサービスを提供するホンダモビリティソリューションズの高見聡社長は、自動運転車の社内を「楽しい空間にし、移動の価値を高めること」がビジネスモデル形成の鍵になると指摘する。

また、経済合理性の確保以上に、絶対条件になるのは安全性の担保だ。「東京2020パラリンピック」ではトヨタ自動車の「eパレット」と選手との接触事故が発生。自動運転の難しさが改めて浮き彫りになった。移動に関わる課題解決は喫緊となっているが、社会全体でのルールづくりなどを含めて一歩ずつ課題をクリアしていく必要がある。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞9月10日掲載