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2021年9月07日

ヤマハ発、無人搬送サービスを外販 自動運転「レベル4」ノウハウ蓄積

ヤマハ発動機と自動運転ベンチャーのティアフォー(武田一哉社長、名古屋市中村区)が自動運転「レベル4」(限定領域での自動運転車)の車両による無人搬送サービスを外販する。屋外使用にも耐える自動運転のけん引車だ。もともとこうした現場ではAGVと呼ばれる無人搬送車が活躍する。AGVの高度化が進めば、レベル4車両をめぐるルールやマナーの形成にも役立ちそうだ。

ヤマハ発のゴルフカートベースの低速電気自動車(EV)にティアフォーの自動運転ソフトウエアを搭載。車両導入から運用、アフターサービスをパッケージ化した「イヴオート」をサブスクリプション(定額利用)で提供する。事業主体は両社が2020年に設立した合弁会社イヴオートノミー(米光正典CEO、静岡県袋井市)。1日から先行受注を始め、22年夏に納入が始まる。3年で500~1千件の導入を目指す。

AGVはすでに製造や物流の現場で広く使われているが、車両の耐久性や誘導用磁気テープを敷設する関係上、屋内使用が中心で、屋外輸送はフォークリフトやドライバーが乗るけん引車に頼ることが多い。5年前には日産自動車が完成車を専用埠頭まで運ぶEV「リーフ」ベースのけん引車を追浜工場に導入したが、技術開発を兼ねており、外販はしてない。人手不足への対応や生産性向上のため、さらなる無人化ニーズが高まっていた。

ヤマハ発は20年に自社工場で無人自動運転車の利用を始めた。自社工場で得られた構内物流の自動化や生産工程の見える化といったメリットが市場ニーズに合致すると判断し、外販に踏み切ることにした。

通路の狭い生産ライン横を走れるコンパクトなサイズに抑えるとともに、段差や角度のある傾斜でも走行できるようにした。高精度地図を基に走行するため、初期設定や走行経路の変更も容易だ。交換式バッテリー(連続使用は約8時間)で充電待ち時間もなくした。初期費用はAGVよりも安く抑え、月額30万円台からの料金プランで導入のハードルも低くした。

ティアフォーの安藤俊秀技術本部執行役員は「導入企業のルールづくりや教育とセットで車両を使用してもらうことも重要だ」と指摘する。レベル4車両をめぐっては先月、東京パラリンピック選手村で接触事故が起き、歩行者を含めたルール形成という課題が浮き彫りになった。クローズド空間である工場や倉庫ならルールをあらかじめ決めて関係者に教育したり、運用後にルールを柔軟に見直すこともできる。

レベル4車両について、安藤執行役員は「全ての課題を解決してから導入するのではなく、できるところから使ってもらうことが重要だ」と話す。同社は、自動運転バスや配送用車両など、さまざまなレベル4車両の開発にも取り組む。ヤマハ発との協業で、人と自動運転車が混在する空間での経験を積み重ね、公道を走る車両にも得られたノウハウを生かしていきたい考えだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞9月3日掲載