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2021年9月03日

軽トールワゴン、広がるスライドドア採用 消費者ニーズ多様化

軽乗用車販売の半数以上を占めるスライドドア車の車種が広がっている。スズキがトールワゴン「ワゴンR」にスライドドアを採用した派生車「ワゴンRスマイル」を9月に投入する。ダイハツ工業ではスライドドア採用のトールワゴン「ムーヴキャンバス」を2016年に投入したが、「ムーヴ」を上回る販売水準となっている。

軽の主戦場はトールワゴンからスライドドアを採用したスーパーハイトワゴンへと移行したが、消費者のニーズも多様化する中、ワゴンRスマイルの登場でトールワゴンもスライドドア採用モデルが主力となりそうだ。

「軽ワゴンサイズのスライドドアは予想以上にニーズがある」―。商品企画本部の高橋正志チーフエンジニアはワゴンRスマイルの開発に至った経緯について、ワゴンRユーザーを対象にしたアンケートで約4割がスライドドアを要望している点を挙げた。

スマイルはワゴンRの派生モデルという位置付けながら、車両開発の前半はスーパーハイトワゴンの「スペーシア」、後半はワゴンRの部品などを生かしつつ新規開発した。あえてワゴンRの名を冠したのは「ちょうど良いサイズ感と使い勝手の良さを直感的に理解してもらうため」(同)だ。

トールワゴンサイズのスライドドア車はダイハツが先行する。約5年前に発売したムーヴキャンバスは、投入2年目から〝本家〟となるムーヴの台数を上回り、ムーヴシリーズ全体の販売を押し上げる。

20年度のムーヴシリーズ販売台数は1万台超と、軽車名別販売では4位、トールワゴンカテゴリーではトップとなった。ワゴンRや日産自動車「デイズ」、ホンダ「N―WGN(エヌワゴン)」の販売台数がいずれも約6千台だったことから、スライドドア車を設定したムーヴが競合車を一歩リードする。

1993年に登場した初代ワゴンRは、軽の弱点であった室内の狭さを全高を上げることで克服し、トールワゴン市場を開拓した。スズキの軽を代表するモデルとなったが、近年はホンダ「N―BOX(エヌボックス)」などのスライドドアを採用したスーパーハイトワゴンが軽乗用車の主力市場となり、スズキも軽乗用の最量販車種はスペーシアとなっている。

鈴木俊宏社長は「時代とともに顧客ニーズは変わっている。ワゴンRだからといって安住してはいけない」と述べ、自ら築いたトールワゴン市場に新型車を投じて反転攻勢をかける。ただ、足元では半導体不足に伴う国内工場の生産調整が新車販売へ大きな影響を及ぼしている。

ワゴンRスマイルの投入時期も部品調達難の影響で、事前に系列ディーラーに伝えていたスケジュールからは遅れた経緯もあるが、鈴木社長は9月の発売に向けて「部品調達のめどは立った」と強調する。ワゴンRユーザーのニーズを汲み、満を持して投入するワゴンRスマイルの成功は、新車供給をどこまで確保できるかがカギを握る。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞8月28日掲載