政府が打ち出した2050年までの温室効果ガス実質ゼロ化を目指し、国際社会に示す具体的な公約づくりが加速してきた。経済産業省と環境省は新たな「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」案をまとめ、運輸部門を含む脱炭素化で日本が進むべき道筋を示した。

温室効果ガス削減量の目標値を示す「地球温暖化対策計画」の改定に向けた検討作業も終盤を迎えている。政府はこれらについて、11月に英国で開催される「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)」で報告を予定しており、各計画案の確定に向けて、詳細の詰めを急ぐ方針だ。

パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略案は、経産省の産業構造審議会と環境省の中央環境審議会が合同で開いた会合で議論された。前回の長期戦略は19年に閣議決定したが、これを約2年で更新することになる。新たな長期戦略案は全4章で構成。このうち、第2章では温室効果ガスの排出割合が大きい運輸、産業部門の現状認識および今後の政策の方向性がまとめられた。

運輸部門では新車販売のうち、ハイブリッド車など電動車を含む次世代自動車の割合が約4割にとどまることが課題で、カーボンニュートラルの実現では、電動機構のない内燃機関のみで駆動する車(ICE車)を電動車に転換することが不可欠と指摘。

この実現に向け、35年までに乗用車の新車販売を100%電動化する新たな目標が示された。さらに、電動車に対応した都市や道路インフラの社会実装を推進していくことなども明記した。

また、産業分野での取り組みには、経団連が推進する企業の脱炭素化の支援策「チャレンジ・ゼロ」の活動を盛り込み、世界に向けて発信していく考えだ。

第3章では脱炭素化の実現に不可欠となる最先端技術のイノベーション促進に向けた内容を取り上げた。経産省が中心となり策定した「グリーン成長戦略」における「自動車・蓄電池産業」など14件の重要分野について、研究開発の方向性を示した。

新たな長期戦略案は今後、パブリックコメントを通じて幅広く国民から意見を集める計画。こうした声を反映させながら細目を決定し、早期の閣議決定を目指す考えだ。