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2021年8月24日

EVシフトもスポーツカー市場に活気 伝統的〝らしさ〟踏襲

世界的な電気自動車(EV)シフトで肩身が狭くなっているスポーツカーがにわかに活気を帯びてきた。日産自動車は18日、新型「Z(日本名=フェアレディZ)」を米国ニューヨークで初公開した。トヨタ自動車とスバルは共同開発の「86(ハチロク)」と「BRZ」の2代目を発表している。

Zや86/BRZはいずれもガソリンエンジンのみで、駆動方式がFR(フロントエンジン・リアドライブ)、そしてマニュアルトランスミッション(MT)を設定するなど、伝統的なスポーツカーらしさを踏襲する。脱炭素社会実現に向けて、ガソリン車の販売を将来的に禁止する動きが広がっており、モデルサイクルを考慮すると、これら新型車は内燃機関のみのスポーツカーとして最後のモデルとなる可能性もある。

「マニュアルトランミッションも選べる」―日産のアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)が述べると、会場から歓声が沸いた。日産は18日にニューヨークで開催した発表会をオンラインで生中継し、世界中のZファンに新型車を披露、電動車時代にもZは存続する姿勢を示した。1969年に登場した初代Zは手ごろな価格と高い走行性能、流麗なデザインで大ヒットし、北米では「Z(ズィー)カー」と呼ばれている。

日産の事業構造改革「ニッサンネクスト」では新型車を12車種投入することで商品力を強化し、経営再建の道筋を描く。90年代後半に倒産寸前と言われるほど経営不振に陥った日産が、ルノーとの資本提携後、V字回復した象徴として14年前にZを復活させたこともあって、新型Zの発表で、日産が復活に向けて前進していることを印象付けたいとの思いが透ける。

86/BRZの全面改良は約9年ぶり。長期間、次世代モデルが投入されなかったことから、一時は一代限りでの生産終了も噂された。初代モデルは手ごろな価格のFRスポーツカーとして、コストをトヨタとスバルが分担して共同で開発した。

2代目も同様に共通の車台を活用したものの、足回り部品などが異なるため、走行性能にそれぞれブランドの個性を打ち出し、差別化を図った。トヨタとスバルそれぞれのスポーツカーのコアなファンは好みが異なるためだ。

一方、電動化や自動運転に対応するため、自動車メーカーでは次世代技術への研究開発に重点的に投資している。特にカーボンニュートラル化に向けてガソリン車を廃止する機運が高まり、スポーツカーの居場所はなくなってきた。ホンダはハイブリッドシステムを搭載している電動車ながらフラッグシップスポーツカーの「NSX」を22年末で生産中止することを決めた。

電動化時代もスポーツカーが生き残れるのかは、Zや86/BRZなどの伝統的なスポーツカーの動向にかかっている。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞8月21日掲載