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自動車産業インフォメーション

2021年8月17日

SDGsに力入れる損保業界 気候変動・異常気象が大きなテーマ

損害保険業界でSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みが加速している。国連は2030年までを「行動の10年」と位置付けており、損保業界でも取り組みの具体化が進む。損害保険ジャパンの調査では、SDGsに対する消費者の認知が高まっていることや、取り組みが企業イメージや競争力に影響を与えることも分かった。

損害保険各社は、SDGsが定める目標の達成に向け、さまざまなノウハウやソリューションを顧客企業に提供する。中でも気候変動は保険事業と密接に関わるため、力を入れ施策を展開する。

損保ジャパンは、10代~60代の消費者を対象としたSDGsに関する意識調査の結果を発表した。SDGsを知っていると答えた人の割合は、前回調査時から40㌽ほど増加し、全体の4人に3人が認知している。

SDGsや社会課題に取り組む企業に対しては、約6割のユーザーが商品選択の参考にすると回答。取り組むべき社会課題の質問では「気候変動・異常気象」と答えた人が全体の31・8%を占め、2番目の多さだった。

気候変動による異常気象は、損保業界にとっても大きなリスクとなる。水災や大型台風は家屋や自動車へ被害を及ぼし、保険金支払いを増加させる。

大規模災害は頻発・常態化の傾向にある。保険料率算出機構は6月、リスクの高まりを理由に火災保険の参考純率を平均10・9%引き上げた。災害が常態化すると火災保険などの安定的な提供が難しくなる。そのため損保各社は、温室効果ガスの排出削減や防災、減災の取り組みを進める。

三井住友海上火災保険は、電気自動車(EV)の充電設備に損害が発生した際の補償を提供し、カーシェア事業者などのEVシフトを支援する。中小企業向けの二酸化炭素(CO2)排出量削減支援なども用意する。

災害が発生した際の防災・減災に向けたソリューションの開発も進む。東京海上日動火災保険は、グループ企業と共同で河川氾濫による浸水や土砂災害をAR(拡張現実)で体験できるアプリを開発した。

全国の河川データとハザードマップを結び付け、災害発生時の状況を可視化する。ユーザーは在住地域のリスクを確認でき、防災・減災の意識向上に役立ててもらう。

あいおいニッセイ同和損保は、災害発生時の被害予測サイト「シーマップ」の機能を拡張し、避難場所や避難所の混雑状況の確認機能を追加した。混雑状況を提供することで、コロナ禍の密集を避ける効果にもつなげたい考え。今後も機能拡充する。

業界全体の取り組みも始まっている。日本損害保険協会(舩曵真一郎会長)は7月、気候変動対応方針を策定した。温室効果ガスの削減を図り、脱炭素社会の実現を呼びかける。

保険の引き受けや防災・減災に資する事業などを通じて、気候変動リスクの緩和に取り組むことを目標に掲げる。気候変動に関する理解や具体的な行動の指標の策定支援のため、会員会社向けの勉強会も開催している。

カテゴリー 社会貢献
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞8月13日掲載