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自動車産業インフォメーション

2021年8月17日

自動車9社の4~6月期 北米好調や利益率改善で全社が増収増益

上場する自動車メーカー9社の2021年4~6月期決算が出揃った。前年同期は新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けた反動で、今期は全社が増収増益となった。トヨタ自動車といすゞ自動車は売上高と純利益が過去最高で、日産自動車、ホンダ、三菱自動車の3社は通期見通しを上方修正した。

北米などの新車販売が好調なのに加え、半導体不足による在庫水準の低下で台当たり利益率が改善しており、一部でコロナ禍前の水準にまで業績が回復している。一方で、半導体不足は想定以上に長引く見通しなのに加え、原材料価格の上昇も収益を圧迫する要因になっており、第2四半期以降も予断を許さない状況が続く。

大手メーカーの業績が好調だったのは、利益の柱である北米の新車需要が回復したためだ。コロナ禍からの反動増でトヨタやホンダの北米の新車販売台数は前年同期比2倍以上に増加し、日産も同70・3%増と大きく伸ばした。

北米市場では新車の需要が好調ながら、各社とも半導体不足による生産調整の影響から在庫が低水準で推移している。業界平均の在庫日数は25日となっている。米国で大量の受注残を抱えているスバルの在庫日数は7日となっている。

在庫不足は結果的にインセンティブ(販売奨励金)が抑制され、各社とも新車の台当たり収益を押し上げている。インセンティブによる拡大戦略が業績悪化を招いていた日産は「現行車のインセンティブは3分の2下がった。

新型車はほとんど半分」(アシュワニ・グプタ最高執行責任者)の水準。主力市場である北米の回復によって通期の営業利益が3期ぶりに黒字転換する見通しとなった。半導体不足の影響が想定上で通期の販売台数見通しを4万台引き下げたスバルは、インセンティブ抑制などで台数減をカバー、通期業績見通しの収益を据え置いた。

4~6月期の収益を押上げたもう一つの要因が為替差益だ。為替水準は1㌦=110円と前年より2円円安となり、各社が期初に想定したレートよりも円安に振れた。通期見通しを期初の営業損益ゼロ予想から1500億円の黒字に上方修正した日産は、為替レートの見直しで、営業利益段階の為替差損が当初見通しから800億円改善することを見込む。

売上高、各利益で過去最高を更新し営業利益率12・6%となったトヨタは、半導体需給状況や原材料価格の動向が見通せないことから通期見通しの上方修正を見送った。ただ、想定為替レートは1㌦=105円に据え置いている。トヨタは対ドルで1円動くと約400億円の為替差損が生じる。円安基調が続けば収益を押し上げる余地がある。

第1四半期は全体的に好調な業績となったが、各社とも先行く慎重な見方を崩していない。

ホンダやスバルは半導体不足による減産影響を理由に期初予想から販売台数を下方修正した。各社とも半導体不足やコロナ再拡大による生産への影響、原材料価格の高騰など、先行き不安定要素を多く抱えており、楽観できない状況が続く。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞8月6日掲載