「人間中心」を重視して開発したまったく新しいドライビングシューズの予約受注が6日から始まった。手がけたのはマツダとスポーツ用品大手ミズノ。自動車メーカーとスポーツ用品メーカーの異業種タッグが互いの知見を生かし、「走る歓び」を提供するドライビングギアをつくり上げた。
「人間中心のものづくりに共感し、技術の交流が始まった」―。マツダでドライビングシューズ開発プロジェクトを担当した梅津大輔氏は、ミズノとのコラボレーションの発端を振り返る。
マツダとミズノの出会いは2015年のこと。当初、素材領域などでの知見を深めるために始まった技術交流が次第に発展した。エンジニア同士が「シューズと車の足回りは親和性が高い」(同)ことを実感した上で、マツダが目指す「人馬一体」を高い次元で実現するドライビングシューズを共同開発することで合意した。
マツダのクルマのデザイナーやミズノのパターン職人らが約4年かけて開発したドライビングシューズは、軽快、安定的で、快適なペダル操作を実現するとともに、歩行時の使い勝手にも配慮した機能性やデザインの両立を目指した。
それぞれが培った技術が生かされており、足首周りにストレッチ素材を採用することでペダルの引き上げ操作の負担を軽減する「背屈サポートアッパー」には、マツダがシートポジション、ミズノが競泳水着で培った姿勢保持の技術・ノウハウを活用した。
必要な荷重情報を的確に足裏に伝えるとともに、踵(かかと)の安定性を高めるソールはミズノのスポーツシューズ設計技術を応用、デザインはマツダの内装で使用する「ヌバック」を採り入れた。
両社が異業種と組んだのは、ドライビングシューズ開発で得たノウハウを、それぞれの本業にフィードバックするためだ。同じシューズでもスポーツ用と自動車用では求められる要素が大きく異なる。一瞬で大きな力をかける陸上競技と比べて、ペダルを踏む力は小さく繊細な操作が求められる。
ドライビングシューズでは、スポーツには発生しない横Gがかかる。ミズノはマツダとのコラボで、これら新たな領域での知見を得ることができたという。一方のマツダはミズノから当初は理解できなかった「パターンの技術」を得た。協業を通じてマツダは内装の開発、ミズノはより幅広いシューズの開発に生かしていく。
新開発ドライビングシューズは、クラウドファンディングサイト「マクアケ」で予約注文を受け付ける。納品は2022年3月末からの予定。価格は3万9600円(消費税込み)。