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2021年7月07日

自動車メーカー 懐かしのスポーツカー、復刻部品を続々再販

自動車メーカーが、古い車両の補修部品を復刻して相次ぎ再販し始めた。トヨタ自動車は1980~90年代に販売したスポーツカー「スープラ」の復刻部品を追加発売する。ホンダは「S2000」や「ビート」、日産自動車は「スカイラインGT―R」などの補修部品を再び供給中だ。

こうした旧型車は海外人気の高まりもあって、価値が見直される一方、純正部品の入手が困難になっている。愛好家のニーズに応えようと、各社は生産手法を見直したり、3Dプリンターを活用するなどして対応している。

トヨタが旧型スープラの部品販売に乗り出したのは、17年ぶりに復活を果たした新型車の投入がきっかけだ。対象となるのは「A70型」(86~93年販売)と「A80型」(93~2002年販売)で、7月からフロントバンパー(A80)やボディーサイドモール(A70)など12品目を追加する。

第1弾と合わせて22品目を取りそろえる。通常の純正部品と同じ扱いとなり、系列ディーラーから取り寄せ、取り付けも任せられる。

トヨタが「GRヘリテージパーツ」と銘打つ旧型車用の部品は、自動車メーカー以外では生産が難しいものが中心で、当時の金型を使って再生産するだけでなく、代替部品や他社の部品を紹介するケースも含む。

当時、部品を製造していたサプライヤーとも協力体制を敷き、部品供給に当たっている。同社または、ヘリテージパーツ専用のウェブサイトで愛好家から復刻のリクエストも募っている。

ホンダは17年から軽スポーツカーのビート(1991~96年販売)用純正部品の供給を始め、初代「NSX」のレストアサービスや、S2000のパーツカタログをウェブサイト上に公開するなど、旧型車のサポート体制を手厚くしてきた。

S2000では、発売20周年を機に用品子会社のホンダアクセスがフロントバンパーやスポーツサスペンションを新たに投入し、ファンを喜ばせた。

日産は、最新の生産技術を用いて旧型車用部品を生産している。スカイラインGT―R(R32型)のリアパネルは、金型を用いずにボディーパネルを成形する「対向式ダイレス成形」によって生産。ワイヤーハーネス用の保護材は3Dプリンターを駆使して生産する。

廃番となった純正補修部品を再供給する「ニスモヘリテージパーツ」では、こうしたさまざまな生産技術などを活用してコストを抑えつつ供給品目を増やしている。

ドイツでは、車両生産を打ち切った後の部品供給期間を最低10年と定める。実際には10年以上にわたって供給するメーカーが大半だが、国内では明確なルールがない。家電製品は経済産業省による指導のもと、製造打ち切り後の補修用部品の保有期間を「冷蔵庫は9年」「テレビは8年」などとそれぞれ定めている。

しかし、人命に関わる自動車の場合、安易に部品供給を打ち切るわけにはいかない上、金型の保管費をどこが持つかなど取引慣行上の課題もあって議論が進まない。

一方で、80~90年代の日本製スポーツカーの価値は、こうした車両を扱った映画や漫画に由来する人気に加えて、右ハンドル車の走行が原則禁じられている米国で海外製輸入車両の規制を緩和する「25年ルール」による中古車流出もあって一気に高まっており、補修部品の引き合いも増えている。

自動車メーカーにとって決して採算に見合う事業ではないが、欧米並みに日本車のブランド価値が世界的に認められ始めた証(あかし)とも言え、自動車各社は前向きな対応を見せているようだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞7月3日掲載