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自動車産業インフォメーション

2021年7月02日

自動車メーカー株主総会 関心は「脱炭素」に向けた取り組み

東京証券取引所に上場している自動車メーカー9社の定時株主総会が相次いで開催され、株価変動に大きく影響する脱炭素に向けた取り組み姿勢を問う株主の声が目立った。欧米と中国の自動車メーカーが電気自動車(EV)シフトを本格化する中、出遅れ感のある日本の自動車メーカーへの株主の懸念は強い。

製品と生産活動での温室効果ガス排出量削減という社会的使命を果たしながら収益性をいかに高めるのか、各社の経営陣が説明した。

「EVで先行したのに、完全に存在感を他社に取られてしまっている」―。電動化戦略に関して株主から厳しい叱責が飛んだのが三菱自動車だ。2009年に他社に先駆けて量産型EVを市場投入したものの、EV販売は苦戦しており、EVで先行しているイメージはない。

一方で、三菱自の加藤隆雄社長は「現状、EVで儲けることは難しい」と述べ、当面は利益率の高いプラグインハイブリッド車(PHV)を環境戦略の中核に据えることを説明、理解を求めた。

リチウムイオン電池の価格高価で、補助金に依存するEVの販売で収益を確保するのは難しい。ただ、EV専業の米テスラの業績は好調に推移し、黒字化が定着してきただけに、先行した自動車メーカーにもどかしい想いを抱く株主は少なくない。

環境対応車では「全方位戦略」を推進するトヨタ自動車の前田昌彦執行役員は、EV開発に注力する中で「デジタル化とTPS(トヨタ生産方式)がカギ」と説明。

開発領域の拡大で増える情報量をTPSを活用して整理し、適切な箇所をデジタル化して開発を効率化する。「投資一つひとつの原単位を小さくし、フルラインアップの電動化に応える」(前田執行役員)と説明する。

環境対応車では提携するトヨタを頼りとするスズキやスバルにとっては、量産効果で開発コスト低減を図る一方、「らしさ」をいかに打ち出すかも課題だ。スバルの中村知美社長は、EV用モーターに「AWDの制御の知見などを生かせる。スバルらしさはより高められる」と強調、〝トヨタ車化〟するスバル車を懸念する株主の声を打ち消した。

スバルのように特徴的な内燃機関やモータースポーツのブランドイメージが強い自動車メーカーの株主は、電動化に伴って、築き上げてきたブランドが崩れることも懸念する。40年に四輪車の新車販売すべてをEVと燃料電池車(FCV)に切り替えるホンダに「本田宗一郎はどう思っているか」と批判する株主もいた。

また「(ホンダブランドを築いてきた)スポーツカーをどう展開するのか」との質問に、三部敏宏社長は「過去の延長線上にはないカーボンニュートラル時代のスポーツカーについて議論している」と述べ、早期商品化を明言した。

三菱自の加藤社長は、経営再建が最優先としながらも「スポーツカーは自動車メーカーの花形であることは理解している。いずれ出していきたい」と前向きに発言した。

カテゴリー 会議・審議会・委員会
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞6月29日掲載