会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2021年6月16日

広がるEVオンライン販売 ネットで購入手続き完結

電気自動車(EV)のオンライン販売が広がっている。日産自動車は今冬販売する予定の新型EV「アリア」で、販売店に出向かなくてもインターネットだけで購入手続きを完結できるワンストップサービスを導入する。ボルボ・カーズはEV販売についてオンラインのみとする。EVで先行するテスラも実店舗はほとんど展開せずネット販売が中心だ。

EV購入層はデジタルリテラシー能力が高い傾向にあるため、オンラインで完結する販売手法を導入する。日本市場では根付かなかった自動車のネット通販がEVで前進する可能性もある。

日産は新しいフラッグシップモデルとして展開するアリアの市場投入に向けて世界共通の予約サイトを開設、国内では専用の会員サイト「クラブアリア」を立ち上げた。同サイトでは、自宅に居ながらバーチャル(仮想現実)で実車さながらのアリアを体感できるコンテンツをはじめ、ウェブ上で開発秘話やEVのあるライフスタイルなどを紹介する。

購入手続きをオンラインだけで完結できる仕組み導入する。クレジットをはじめ、契約に必要な各種書類のアップロード、電子契約に必要なサインにも対応する。見積もりや査定を含めオンラインで対応する。納車後のサービスもサイトを通じて案内し、クラブアリアのアカウントを使ってレンタカーやカーシェアなどの優遇サービスも受けられる。

EVの購入を検討しているユーザーは、航続距離や充電インフラ、下取り価格の低下などを不安視する傾向にある。クラブアリアでは、ユーザーの不安を払しょくするため、オンラインを使って時間を問わず、気軽にスタッフに相談できるサービスを提供する方針で、インターネットをフル活用してアリアの販売を促進する。

ボルボ・カー・ジャパン(マーティン・パーソン社長、東京都港区)は今秋投入する量産EV「C40」の販売では、メーカーの方針に沿ってオンライン販売のみとする。

加えて、初期モデルはサブスクリプション(定額利用)で販売し、リセールバリューを気にせずEVを選択できるようにする。購入したEVがユーザーの利用環境にそぐわない場合は短期で解約できるようにする。

日産のジャパンアセアンデジタルトランスフォーメーション部の山口稔彦部長は「単純にオンライン化するだけでは顧客ニーズに対応するのは難しい」と指摘する。クラブアリアではコンテンツやサービスを充実するとともに、顧客の多様なニーズに対応するため、販売店舗での試乗や対面式商談とデジタルを、自由に組み合わせるようにする。

自動車のネット通販は十年以上前から一部で取り組んできたものの、国内市場では定着しなかった。EVも日産が10年前に他社に先駆けて国内市場に投入したものの、普及に向けたハードルは高かった。

脱炭素化やコロナ禍によるデジタル化によって自動車を取り巻く環境が大きく変化する中、デジタル技術を駆使したEV販売が、国内市場に大きなインパクトを与える可能性がある。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞6月5日掲載