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2021年6月11日

国交省、交通事故後遺障害者の救済強化 関東で施設拡充

国土交通省は、交通事故により後遺障害が生じた被害者救済策を強化する。重度な脳機能障害を受けた被害者の治療や介護を行う専門の「療養施設」を2021年度中にも関東地方で拡充し、関東で課題となっている入院待機者の解消を目指す。

被害者への「介護料」支給事業では、対象項目に消毒液やマスクを追加するなど新型コロナウイルス感染症対策にも力を入れる。さらに介護者なき後の救済のため、障害者支援施設などで医療関係者の人材確保に必要な補助も行う計画。国交省はより多くの被害者救済に向けて、今後もさまざまな施策を充実してく方針だ。

交通事故被害者の救済策の拡充は、国交省が毎年開いている「今後の自動車損害賠償保障制度のあり方に係る懇談会」で報告された。同省では自動車事故対策機構(ナスバ)を通じて救済事業を実施している。

事故で脳に重大なダメージを受け、意識障害が残る被害者の支援では全国4カ所の療護センターに加え、18年には北陸、20年には四国で小規模委託病床を増やすなど全国的に受け入れ体制を整備してきた。しかし、現在も全国で入院待機が発生し、その大半が関東となっている。このため、今年度は同地域に小規模委託病床を5床追加することを決めた。

国交省やナスバが療護施設の体制整備を急ぐ背景には、昨今の交通事故の状況がある。先進運転支援システム搭載車の普及などで交通事故発生件数や24時間死者数は減少傾向が続いている。

その一方、重度後遺障害者数は横ばいが続き、交通事故の被害者に占める割合が高まった。今後も重度後遺障害者の治療や介護に迫られる被害者家族が一定数出ると見込まれ、その支援体制を拡充する。

一方、今回の懇談会では救済事業の原資となる「自動車安全特別会計」について、一般会計に貸し出している約6千億円に対し、「早期の全額返済を求めるべき」との声が多くの委員から上がった。

21年度予算では47億円を繰戻すなど、4年連続で返済が続いているが、繰戻額よりも積立金の取り崩し額が上回っている状況に変化はない。積立金が枯渇すれば、安定した救済事業の実施が困難になるため、着実に繰戻しが実行されるよう関係省庁への働きかけを強める方針も確認された。

カテゴリー 社会貢献
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞6月8日掲載