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2021年5月26日

多様なETC利用が本格化 乗車したまま各種決済も

ETC(自動料金収受システム)を活用した新たな取り組みが広がっている。ETCマネジメントサービス(森克実代表取締役CEO、東京都中央区)は13日、駐車料金収受や身体障害者用駐車スペースの確保が可能な新サービス「ドライブノード」を開発し、2022年から順次提供を開始すると発表した。

ETCソリューションズ(中村英彦社長、東京都港区)も今年4月、新たな決済サービス「ETCX」の申し込み受け付けを開始。無線通信機能を核にさまざまなサービスを展開可能なETC技術は、コロナ禍を受けて高まる非対面型消費のニーズにも沿うだけに、環境整備は今後いっそう本格化するとみられる。

半面、足元では半導体不足に伴うETC2・0車載ユニットの供給難などの課題も顕在化しており、普及の足かせになるとの懸念も広がりかねない。

■有料道路以外でも広がる利用

ドライブノードは、ETCとフィンテックなどを組み合わせたシステム。駐車場出入り口などに設けたアンテナと車内のETCユニットが通信し、入出庫車両を確認・認証できるほか、身障者用車両のみを専用駐車スペースに誘導することなども可能とする。

併せて、駐車場近隣の商業施設や公共交通機関に設置した機器で、運転者のスマートフォンに表示したQRコードを読み取れるようにする。

車両、運転者、駐車場、訪問先を共通のサーバーを通じてひも付けることで複数施設の一体的な利用を促す狙いで、小規模集客施設による近隣駐車場の活用や、円滑なパークアンドライド利用、観光地における周遊性向上などを見込む。

ETCXが訴求するのは、決済の利便性だ。有料道路や駐車場に加え、ドライブスルー店舗や給油所など、自動車での訪問を前提とした各種施設でも車両に乗ったまま決済を完了可能とするもので、既に一部の施設では実証実験や運用を始めている。

■利用率の頭打ちが普及に向けた課題

こうしたサービスの浸透を図るうえでカギとなるのが、ETCのさらなる普及促進だ。国土交通省がまとめたETC利用率は、05年3月の32・8%から10年3月には83・7%にまで上昇したが、15年3月時点では89・0%、20年3月時点では92・9%と頭打ちの様相となっている。

政府は5年以内に都市部で、10年以内には地方部でも高速道路料金所のETC専用化を目指すロードマップを策定し、購入助成金などの用意も進めることで利用率を引き上げたい考えだ。

■足元では半導体不足も向かい風に

高速大容量通信が可能なETC2・0の浸透が遅れていることも懸念点だ。電子情報技術産業協会(JEITA、石塚茂樹会長)のまとめによると、20年度のETC2・0車載ユニットの出荷台数は、ETC車載ユニットの半分ほどで推移している。

年度下期は前年比50%以上プラスとなる月が続くなど普及は順調とみられたものの、21年2月は前年割れに。半面、同月のETC車載ユニットは前年比16・0%増となっている。

背景にあるのが、ユニットに内蔵される半導体の世界的な調達難だ。実際に、ある用品チェーンの担当者によると半導体不足が顕在化した20年末以降「在庫が逼迫しているとの声が販売現場から上がっている。

一部では在庫に余裕のある非ETC2・0ユニットを勧めるなどの対応を取っている」という。

ドライブノードとETCXはサービス対象をETC2・0車載ユニット搭載車に限定しているわけではないものの、今後多くの事業者が参入し利便性を競うためにも、ETC2・0市場の回復動向には注目が集まりそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞5月22日掲載